2020年11月10日
「施工管理」と聞くと、皆さんはどのような印象を持つでしょうか。「とにかく忙しい」「長時間勤務」「昼夜逆転の生活」・・・といった多忙で激務というネガティブなイメージを持つ方も多いでしょう。確かに、施工管理の仕事はそういった一面もあります。しかし、本当にそれだけなのでしょうか。
施工管理は、何もなかった場所に新しい何かを創り出す仕事です。確かに大変な部分はありますが、決してそれだけではありません。
では、施工管理のやりがいとは一体どういった部分なのか。本記事では「施工管理のやりがい」について、施工管理者歴5年である筆者の目線でお伝えします。
まず、施工管理のやりがいをお話しする前に、実際の仕事内容について説明します。
施工管理といっても、建築や土木、電気など様々な業種がありその詳細は異なりますが、大まかな仕事内容は下記の通りです。
まず一つ目が「現場安全管理」です。施工管理は現場のリーダーとなって職人をまとめる重要な役割であるため、作業エリアの指示や作業方法の検討を行い、職人達が安全に作業できる環境を整えます。
また、各職人の体調チェックや工具・作業足場などの最終点検も現場安全管理業務に含まれます。
二つ目は「発注業務」です。どの資材をいくつ発注し、それをいつ現場に入れるかなど材料の段取りを行います。もちろん、この発注業務は、資材だけでなく協力してくれる業者選定も含まれます。
現場の難易度を鑑みて、適切な協力業者を配置する事も発注業務の重要なポイントと言えるでしょう。
三つ目は「工程調整」です。現場の進行を想定し、各工種の工事日程を組み上げます。この工程調整の作業がきちんと出来ないと、現場は確実に成功しません。
現場の進捗を予想しつつ、各工種がスムーズに作業できるようにイメージしながら考えなければならないのです。
四つ目は「品質チェック」です。各工種の職人が作り上げた物をチェックし、この品質で問題ないかを判断します。これは現場経験が必要になる作業であり、単にきれい・汚いで判断していいものではなく、「正しい施工方法で行っているか」「次に行う作業がしやすい状態か」などあらゆる方向から判断していかなければなりません。
特にこの四つ目に関しては、現場経験豊富なベテラン施工管理者の助言を聞きつつ進めていくようにしましょう。
また、施工管理の勤務時間は、現場によって様々です。新築案件であれば平日の日中がメインになりますし、日中営業しているような施設の改修案件の場合は夜勤になる事もあります。作業条件に合わせて勤務時間が変化するということも念頭に置いておくと良いでしょう。
施工管理の大まかな仕事内容を把握したところで、本題である「施工管理のやりがい」について解説します。ポイントは全部で5つです。
施工管理の仕事の始まりは「設計図」を入手した時点から始まります。つまり、存在しているのは、まだ数枚の紙という状態です。その状態から、施工管理者や各工種の職人の手で形にしていくのです。
何もないところから何かを創り出すためには、「どうしたらこの形を実現できるか」ということを何度も模索し、あらゆる方法で挑戦します。時には失敗することもありますが、その過程はご自身の中で一生の思い出となるに違いありません。
ゼロから何かを作り上げることは、確かに大変な作業と言えるでしょう。しかし、その大変さを乗り越えた先には、他の仕事にはない達成感を得ることができます。
現場完成を迎えると「引き渡し」があり、現場の権限が施工管理者からクライアントへ移ります。それはある種、現場の終わりの合図となります。
建設現場は長期案件が多く、数年に渡って関わる案件も少なくありません。そして、長く関われば関わるほど苦労もし、その分思い入れが強くなります。だからこそ、引き渡しが完了すると、施工管理者の心境は安堵の気持ちと少しの寂しさが生まれることが多いです。
しかし、仕事として役目を終えた後、今度はその手掛けた空間の「利用者」として関わることができるようになります。ご自身が手掛けた空間を、今度は利用者として訪問すると感慨深く、現場の思い出が蘇るでしょう。
建設現場では、「全く同じ」は存在しません。例え同じようなデザインであっても、現場の形が全く同じという場合は限りなく少なく、工事条件や作業体制なども異なってくると、その現場に合わせてアレンジをしなければならなくなります。
また、施工管理の仕事は、数ヶ月〜数年ごとに案件やチーム、環境が変わるため、常に新鮮な気持ちで取り組むことができるでしょう。
現場経験を積んでいくと、「納まり」を考えて仕事を進めなければなりません。「納まり」とは、ある部材と部材、空間と空間など2つ以上のものが接する部分を指します。
また、技術や構造などデサイン以外にも「納まり」という考え方が必要になります。
本来現場では、設計図書をもとに施工を進めていきますが、設計段階や図面の作成段階では確定できない事項も多く、施工しながら状況を見ないと納まりが悪くなるというケースが発生する場合もあります。
建設現場は1mmのズレも命取りになります。だからこそ、どのような寸法なら最適に納まるのかを考えて判断することは大変責任のある仕事と言えますが、それらが現場に入り形になっていく様を見ると、なんとも言えない「高揚感」を得ることができます。
設計図通りに最も適した方法で制作し、施工を管理しながら実際に納める。全てが完成した際には、また一つ施工管理としての経験値を上げることができるでしょう。
施工管理は、1日数十人の職人を束ね、一つの空間を創り上げていきます。工程の進捗に合わせて職人は入れ替わるため、常に新しい気持ちで現場に参加することができます。
施工管理はチームリーダー的存在として指揮能力や雰囲気作り能力などが試されますが、みんなで一つのものを作り上げる過程は、自分のスキルや経験値の向上にもつながるでしょう。
施工管理の仕事は大変な一面もありますが、それ以上にやりがいのある仕事ということが分かったのではないでしょうか。
近年では建設ラッシュが進み大規模案件が多いため、会社からのフォローも手厚い場合が多いです。また、先輩に相談できる環境を整えている企業が多いので、未経験者でも問題なく業務を行うことができるでしょう。
何もないところから新しいものを作り出す作業は、試行錯誤するエネルギーと情熱が必要になりますが、ものづくりが好きな方や、チーム一丸となって何かに取り組むことが好きな方、常に新しいものと向き合っていたい方にはぴったりの仕事ですので、ぜひ施工管理を目指してはいかがでしょうか。