2020年11月4日
1級土木施工管理技士は、土木工事における施工管理のスペシャリストとして認識されている国家資格です。1級土木施工管理技士になるためには、受験資格の条件や所定の実務経験を満たしている必要があります。本記事では、1級土木施工管理技士についての基礎知識から、受験資格の条件や試験内容、さらに資格取得方法について詳しく解説していきます。
土木施工管理技士には1級資格と2級資格があり、国土交通省から指定を受けている一般財団法人全国建設研修センターが試験を実施しています。
土木施工管理技士は、道路や鉄道、トンネル、橋梁、上下水道などといった私たちのライフラインの基礎となる施設工事の現場監督責任者として従事しています。主に、現場を円滑に動かすための施工計画の作成や工程管理の調整、構造物が正確に作られているかチェックするための品質管理や作業員の安全管理、さらに、工事を進めるための許可申請手続きや、周辺住民への説明といった幅広い業務を担っています。
また、下請けや元請けと円滑なコミュニケーションを図り、リーダーシップを発揮して工事を完遂することも、土木施工管理技士に課せられた大切な役割です。
1級土木施工管理技士は、土木工事現場において「主任技術者」または「監理技術者」として働くことができます。主任技術者は、施工計画の作成や工程管理、品質管理などを行い、工事現場を技術的に管理する立場として施工に携わる全ての関係者の指導監督を担います。なお、大規模な建設工事を施工する場合や、発注者から直接工事を請け負った元請建設業者の下請け請負金額が4,000万円以上になる場合は、監理技術者を配置しなければなりません。
1級土木施工管理技士は、「主任技術者」と「監理技術者」どちらの立場にも就くことができるのです。
土木施工管理技士は、土木工事の現場を管理する仕事で、主に施工計画の作成や品質管理、安全管理などを行います。担当する現場は、道路や橋、トンネル、河川などの土木工事などで、現場の作業工程を作成し、実際に現場が竣工するまでのフローを管理します。現場の安全や品質、そして工事コストを管理するため、業務内容は多岐に渡ります。その他にも、工事を行うために必要な書類作成や役所の手続きなどが必要になるため、現場作業に関する知識はもちろんのこと、事務処理能力やコミュニケーション能力も必要になる仕事です。
仕事内容には現場を管理する仕事と事務仕事の両方がありますが、メインは現場仕事なのでオフィスで作業するよりも実際の現場や現場事務所が職務スペースになります。また、実際の勤務時間は作業時間によって決まるので、現場によって異なることを覚えておきましょう。
土木施工管理技士の資格には1級と2級があり、それぞれ業務範囲が異なります。1級の場合、資格を取得すると「主任技術者」や「監理技術者」として現場に関わることができます。しかし、2級は「主任技術者」として現場に携わることができますが「監理技術者」としては関わることができません。
この「監理技術者」とは、請負代金総額4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事を担当できる技術者なので、大型物件の責任者になることができる資格です。小・中規模の現場であれば2級の資格でも問題ありませんが、ゼネコンのように大規模工事を担当する機会が多い場合は1級を取得した方が良いでしょう。ただし、責任重大な資格である分、試験の難易度は2級よりも高く、受験資格も厳しく設定されています。受験する際は、早めに対策を始めるようにしましょう。
次のイ、ロ、ハ、ニのいずれかに該当する者
※実務経験年数は、試験実施年度にてそれぞれの試験日の前日までで計算してください。
区分 | 学歴又は資格 | 土木施工に関する実務経験年数 | ||
---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||
イ | 大学卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士」に限る) |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 | |
短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) |
卒業後5年以上 | 卒業後7年6ヶ月以上 | ||
高等学校・中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後10年以上 | 卒業後11年6ヶ月以上 | ||
その他 | 15年以上 | |||
ロ | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後8年以上の実務経験(その実務経験に指導監督的実務経験を含み、かつ、5年以上の実務経験の後専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む) | - | |
ハ | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後8年以上 | 卒業後9年6ヶ月以上 |
その他 | 13年以上 | |||
ニ | 2級合格者※1 |
表引用元:一般財団法人全国建設研修センター
※1:区分(ニ)の受検資格で「第一次検定のみ」を受検申込する場合は、「第一次検定のみ」の受検申込書を購入してください。
(注1) | 指定学科 施工技術検定規則(以下「規則」という。)第2条に定める学科をいう。(以下同じ) |
(注2) | 旧学校令 大学は、旧大学令(大正7年勅令第388号)による大学、短期大学又は高等専門学校は、旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校、高等学校は、旧中等学校令(昭和18年勅令第36号)による実業学校を含む。(以下同じ) |
(注3) | 大臣認定者 大学若しくは短期大学と同等以上の学歴又は資格を有すると認定された者は、試験実施機関が作成する「受検の手引」を参照のこと。 |
(注4) | 実務経験年数の算定基準日 上記区分イ、ロ、ハの受検資格の実務経験年数は、それぞれ1級第一次検定の前日(令和5年7月1日(土))までで計算するものとする。 |
(注5) | 指導監督的実務経験 上記区分イの実務経験年数のうち、1年以上の指導監督的実務経験が含まれていること。 |
(注6) | 専任の監理技術者による指導を受けた実務経験 建設業法第26条第3項の規定により専任の監理技術者の設置が必要な工事において当該監理技術者による指導を受けた実務経験をいう。(以下同じ) |
(注7) | 高等学校の指定学科以外を卒業した者には、高等学校卒業程度認定試験規則(平成17年文部科学省令第1号)による試験、旧大学入学試験検定規則(昭和26年文部省令第13号)による検定、旧専門学校入学者検定規則(大正13年文部省令第22号)による検定又は旧高等学校高等科入学資格試験規程(大正8年文部省令第9号)による試験に合格した者及び旧高等学校令(大正7年勅令第389号)による高等学校の尋常科、旧青年学校令(昭和14年勅令第254号)による青年学校本科、旧師範教育令(昭和18年勅令第109号)による付属中学校、師範学校予科若しくは青年師範学校予科を卒業又は修了した者を含む。(以下同じ) |
(注8) | 高等学校を卒業した者(上記区分ロを除く)には、旧実業学校卒業程度検定規定(大正14年文部省令第30号)よる検定に合格した者を含む。(以下同じ) |
(注9) | 短期大学を卒業した者には、旧専門学校卒業程度検定規定による検定に合格した者を含む。(以下同じ) |
(注10) | 2級合格者 2級土木施工管理技術検定・第二次検定に合格した者及び令和2年以前の2級土木施工管理技術検定(実地試験)に合格した者(以下同じ) |
次のイ、ロ、ハのいずれかに該当する者
イ | 1級土木施工管理技術検定・第一次検定の合格者(ただし、(1)ニに該当する者として受検した者を除く) |
ロ | 1級土木施工管理技術検定・第一次検定において、(1)ニに該当する者として受検した合格者のうち(1)イ、ロ、ハ又は次のⅰ、ⅱのいずれかに該当する者 |
区分 | 学歴又は資格 | 土木施工に関する実務経験年数 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||||
ⅰ | 2級合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の指導監督的実務経験及び専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む3年以上 | ||||
2級合格後5年以上の者 | 合格後5年以上 | |||||
2級合格後5年未満の者 | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後9年以上 | 卒業後10年6ヶ月以上 | |||
その他 | 14年以上 | |||||
ⅱ | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 2級合格者 | 合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の専任の主任技術者実務経験を含む3年以上 | ||
合格後3年未満の者 | 短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) |
- | 卒業後7年以上 | |||
高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後7年以上 | 卒業後8年6ヶ月以上 | ||||
その他 | 12年以上 |
(注1) | 上記区分ⅰ、ⅱにおける2級合格後の実務経験起算日は当該試験の合格発表日とする。 |
(注2) | 指導監督的実務経験 上記区分ⅰの実務経験年数のうち、1年以上の指導監督的実務経験が含まれていること。 |
(注3) | 専任の主任技術者の実務経験 資格区分ⅱの2級合格後3年以上の者は、合格後1年以上の専任の主任技術者の実務経験が含まれていること。 |
(注4) | 実務経験年数の算定基準日 実務経験年数は、それぞれ1級第二次検定の前日(令和5年9月30日(土))までで計算するものとする。 |
ハ | 第一次検定免除者 | |
(1) | 技術士法(昭和58年法律第25号)による第2次試験のうち技術部門を建設部門、上下水道部門、農業部門(選択科目を「農業農村工学」とするものに限る。)、森林部門(選択科目を「森林土木」とするものに限る。)、水産部門(選択科目を「水産土木」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を建設部門若しくは上下水道部門に係るもの、「農業農村工学」「森林土木」又は「水産土木」とするものに限る。)に合格した者で、第一次検定の合格を除く1級土木施工管理技術検定・第二次検定の受検資格を有する者(技術士法施行規則の一部を改正する省令(平成15年文部科学省令第36号)による改正前の第2次試験のうち技術部門を建設部門、水道部門、農業部門(選択科目を「農業土木」とするものに限る)、林業部門(選択科目を「森林土木」とするものに限る)、又は水産部門(選択科目を「水産土木」とするものに限る。)の合格した者を含む。また、技術士法施行規則の一部を改正する省令(技術士法施行規則の一部を改正する省令(平成29年文部科学省令第45号)による改正前の第2次試験のうち技術部門を建設部門、上下水道部門、農業部門(選択科目を「農業土木」とするものに限る)、森林部門(選択科目を「森林土木」とするものに限る)、水産部門(選択科目を「水産土木」とするものに限る。)又は総合技術監理部門(選択科目を建設部門若しくは上下水道部門に係るもの、「農業土木」、「森林土木」又は「水産土木」とするものに限る。)に合格した者を含む。) | |
(注) | 実務経験年数の算定基準日 上記1)の実務経験年数は、1級第一次検定の前日(令和5年7月1日(土))までで計算するものとする。 |
1級土木施工管理技士の試験内容は、第1次検定と第2次検定に分かれています。
四肢択一式:2時間30分(午前の部)、2時間(午後の部)
第1次検定は土木一般、専門土木、法規、共通工学、施工管理法の5分野から出題され、マークシート方式になっています。試験内容は全96問のうち65問を解答しますが、そのうち必須問題は35問で、選択問題は61問中30問の解答となっています。
分野 | 出題数 | 必要回答数 | |
---|---|---|---|
午前の部 | 土木一般 | 15 | 12 |
専門土木 | 34 | 10 | |
法規 | 12 | 8 | |
午後の部 | 共通工学 | 4 | 4 |
施工管理法 | 31 | 31 |
記述式:2時間45分
第2次検定は第1次検定の合格者のみが受験可能で、記述式の試験になります。出題数は11問で必要解答数は7問です。このうち1問は必須問題となり、これまでの施工経験や品質管理面でどのような取り組みや活動を行ったかを記述します。
第2次検定の解答は学科試験とは違い公表されておりません。したがって矛盾点や理論に合わない数値、誤った表現などに注意しつつ、問題の意図を正しく把握して解答することが必要です。
分野 | 出題数 | 必要回答数 | |
---|---|---|---|
必須問題 | 施工経験記述(品質管理) | 1 | 1 |
選択問題(1) | 土工(軟弱地盤上の盛土施工の留意点) | 5 | 3 |
コンクリート(コンクリート構造物の施工) | |||
品質管理(盛土の品質規定方式及び工法規定方式による締固め監理) | |||
安全管理(車両系建設機械による労働者の災害防止) | |||
建設副産物(特定建設資材廃棄物の再資源化等の促進) | |||
選択問題(2) | 土工(切土・盛土の法面保護工) | 5 | 3 |
コンクリート(コンクリートを打ち重ねる場合の施工上の留意点) | |||
品質管理(コンクリート構造物施工時の劣化防止対策) | |||
安全管理(移動式クレーンの労働災害防止対策) | |||
施工計画(施工計画書に記載すべき内容) |
第1次検定の合格率が平均50%台で、第2次検定の合格率は平均30%台となっています。最終的な合格率は15%~20%を推移しており、他の国家資格に比べて平均的なレベルか、やや難易度の高い試験であると言えるでしょう。
令和5年度の1級土木施工管理技士の試験日程は下記の通りになります。
【申込受付期間】
【試験日】
【合格発表日】
土木施工管理技士は、私たちの生活の基盤となる土木工事全体を把握して工事を進めなくてはなりません。1級資格になると、管理する工事規模も大きくなるため大変な業務ですが、携わった工事や建造物は地図や後世に残すことができ、大変やりがいのある仕事です。
また、慢性的な人手不足である建設業界において、永久資格である施工管理技士の資格保持者は転職にも有利な上、健康であれば高齢になっても活躍することができるため、ぜひ取得しておくことをおすすめします。