マンションの大規模修繕は何をすれば良い?流れや費用、法律を解説
費用
手順
種類
建築

マンションの大規模修繕は何をすれば良い?流れや費用、法律を解説

2023年7月25日

建物や内部設備は年数を重ねるごとに劣化するため、定期的に修繕を行います。特にマンションのような集合住宅では、一度にまとめて行うことも多く、そのような工事は「大規模修繕」と呼ばれています。しかし、大規模修繕工事といっても工事の内容はその時々によって異なるため、「どのようなことをするのか?」と疑問をお持ちの方も多いでしょう。そこで今回は「大規模修繕工事」の内容や流れ、費用について詳しく解説します。

 


 

マンションの大規模修繕の内容

大規模修繕は、マンションの経年による劣化などにあわせて実施する工事で、様々な工事をまとめて行う特徴があります。以下では、大規模修繕で行われることの多い工事内容について解説します。

仮設工事

詳細の工事に移る前に、まずはじめに行われるのが「仮設工事」です。仮設工事とは、建設現場で、建物や構造物が完成するまでの一時的な工事や設備のことを指し、足場や仮設階段、作業場所などが含まれます。仮設工事は、作業員や住民の安全性、利便性を確保するために必要なものです。しかしながら、仮設工事は一時的なものであるため、修繕が完了すれば足場や仮設階段などはすべて撤去されます。

 

下地補修工事

下地補修工事は、壁や天井などコンクリート部分に生じたひび割れなどを補修する工事です。ひび割れたままにしておくと、地震や経年変化で劣化が進み、修繕では直らない規模のひびになってしまうこともあります。基本的にはひび割れた箇所を補修材で埋める作業になりますが、下地補修の良否は後の工程にも大きく影響するため大切な仕事です。また、今後の建物の寿命にも影響するので非常に重要な工程になります。

 

タイル補修工事

タイル補修工事は、床や壁でひび割れてしまったタイルを補修する工事です。補修方法は色々ありますが、一般的には割れてしまったタイルを一度剥がし、新しいタイルに張り替えます。また、タイルの見た目は問題なくても、下地が浮いて剥がれそうになっているものもあるので、すべて点検した上で施工範囲を決める必要があります。他にもタイルの目地部分を補修したり、水回りのコーキングをし直す作業もあります。

 

シーリング工事

シーリング工事は、外壁のつなぎ目やサッシ廻りのシーリング材を打ち直す工事です。シーリング材とは、気密性や防水性を高めるために建物の継ぎ目やひび割れなどの隙間を充填する材料で、この部分が劣化すると建物の性能が下がってしまいます。10年を目安に劣化すると言われているので、その際は劣化部分のシーリングを一度撤去し、再度充填する必要があります。

 

外壁塗装工事

外壁塗装工事は文字通り、外壁を塗装する工事です。建物の外壁塗装には美観を維持するだけでなく、雨水や汚れからマンションを守る効果があります。また、劣化が進み、下地の接着力が落ちると塗装が剥がれてしまい、建物の本体を痛めてしまう恐れがあるので、定期的な修繕が必要です。施工方法はその時々ですが、塗装を一度剥がして、下地部分からやり直すことが多いです。ただし、美観維持のための塗装工事であれば、上から塗り直すこともあります。

 

鉄部塗装工事

鉄部塗装工事は、鉄部分の塗装を行う工事です。マンションの外部階段や扉、手すりなどに使用されることの多い鉄は、経年劣化で錆びが発生しやすい素材です。見た目が悪くなるだけでなく、耐久性にも影響を与えるので、定期的な修繕が必要です。錆が発生している箇所はまず錆を落としてから塗装することで、本体を保護することができます。

 

防水工事

防水工事は、屋上やバルコニー、廊下などの防水性を維持する工事です。コンクリート部分にヒビが生じると、内部に水が侵入し建物全体に影響を及ぼします。そのため、雨水に触れる恐れのあるエリアや水を使うエリアは、定期的に防水工事を行う必要があります。防水工事には様々な工法があるので、その工法にあった修繕が必要です。

 

マンションの大規模修繕を行う理由

大規模修繕工事は心地よい住環境を保つために必要不可欠です。しかし工期と費用がかかるため「問題が起きてから対処で良いのでは?」と考える方もいるでしょう。そこで以下では、マンションの大規模修繕が必要な理由について解説します。

建物や設備が劣化するため

一つ目は、建物や設備が劣化する理由から定期的に行っています。「ドアが開きにくくなった」「エントランスの床にヒビが入った」というように目にみえる故障だけでなく、「下地が浮いてきている」「機械の装置にほこりが溜まっている」というように日常生活では気づきにくいトラブルも発生しています。定期的に修繕を行うことで、大きなトラブルを未然に防ぐことができるのです。

 

建物の資産価値を落とさないため

二つ目は、建物の資産価値を落とさないためです。建物の資産価値は様々な要因で決まりますが、そのうちの一つに「建物の機能」や「美観」が含まれます。とくに機能は、現在住んでいる方にとっても重要であり、定期的にメンテナンスをすることで資産価値の低下を緩やかにすることができます。

 

法律で定められているため

三つ目は、法律で定められているためです。そもそも建築基準法では「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」(建築基準法第8条第1項)とされており、定期的な修繕が求められています。さらに建築基準法の一部が改正されたことにより、タイル貼り・モルタル仕上げなどのマンションは、修繕の目安が設けられるようになりました。
建物の竣工、改修などから10年を経ている場合は、3年以内に外壁の「全面打診調査」を実施しなければいけません。

 

マンションの大規模修繕を行う周期

上記でも説明した通り、マンションには大規模修繕を行う周期が決められています。国土交通省の「建築基準法に関する施行規則」では、大規模修繕は「築13年以内には外壁に異常がないかを叩いて調べる全面打診調査か、修繕を行うように」というように定められています。

<建築基準法 国土交通省通告第282号より>
築10年を経過した建物(外装材がタイル張り、石貼り、モルタル塗り)について
・外装改修工事を10年以上行っていない
・外壁全面打診調査を10年以上行っていない
上記に該当する場合、3年以内に外壁の全面打診調査もしくは修繕工事を行う必要がある

 
そのため、12周期を目安に大規模修繕工事を行い、上記の項目を定期的に見直しているマンションが多くあります。

 

マンションの大規模修繕にかかる費用

マンションの大規模修繕は大掛かりなものが多く、その分費用もかかります。その費用は「どんな工事を行うのか」「どのくらいの期間で行うのか」によって変わってきます。たとえば、外壁の塗装工事であれば、上部まで作業ができるように足場を設けなければいけませんし、場合によっては高所作業車のような重機が必要になります。一方で床の補修工事や防水工事といった高所作業を伴わない工事なら、仮設費用を抑えることができます。また、工事期間を短期にしたい場合は作業員を増やす必要があるので、その分人件費がかかります。
依頼内容や依頼時期などによって金額が異なるので、見積もりは早めに依頼して計画的に進めるようにしましょう。

 

大規模修繕の流れ

大規模修繕は大掛かりな工事になるため、以下のような手順を行う必要があります。

① 修繕委員会を発足する

修繕委員会とは、管理会社や外部のコンサルティング会社との窓口になり、大規模修繕を主導する組織です。マンションの住民から選ばれることが多く、業者の窓口としてやりとりを行ったり、住民の要望を伝える役割があります。

 

② 住民説明会を行う

住民説明会とは、工事内容や計画を住民に伝える場です。大規模修繕工事は住民の生活と関係するため、事前に説明を行い、了承を得る必要があります。特に騒音工事や粉塵、臭気工事が発生する日は住民に事前に伝えなければなりません。

 

③ コンサルティング企業に劣化状況の調査を依頼する

大規模修繕を行う際は、事前調査が重要になります。プロの視点で状況を確認することで、破損している箇所だけでなく、今後破損する恐れのある箇所も洗い出せるからです。劣化状況を調査した後は工事計画を練って、工事準備を進めていきます。

 

④ 施工業者を選定する

修繕プランがある程度固まった段階で、施工業者の選定を行います。建物を建てたときの施工会社やメンテナンスに来ている業者に依頼すると話をスムーズに進めることができます。ただし、ある程度大規模になる場合は、工事規模に対応できるゼネコンや工務店に依頼することをオススメします。

 

⑤ 工事の準備

業者の選定が完了したら、工事準備に移ります。現地調査や資材の調達、最終の打ち合わせなどを行い、工事がスムーズに進むように調整していきます。

 

⑥ 工事スタート

準備が完了したら、いよいよ工事です。今まで打ち合わせした工程に合わせて工事を行います。上記でも記載した通り、粉塵作業や騒音作業の日程はあらかじめ住民に通達しておきましょう。

 

大規模修繕のよくあるトラブル

最後に、修繕工事でよく起こるトラブルについて説明します。

騒音やホコリ問題

解体作業を伴う工事は騒音や粉塵が出やすく、施工するタイミングを考慮しなければ、住民とのトラブルになってしまいますので、適切な養生を行い、事前に告知することを忘れないようにしましょう。また塗装などの場合、臭気問題のトラブルも起こりうるので同様に注意が必要です。

 

予算よりも費用がかさむ

予定よりも費用がかかり、追加徴収が必要な際もトラブルの原因になります。通常は月々で徴収している「修繕積立費」からまかなうことが多いですが、そのお金では足りず追加徴収する必要がある場合はトラブルになりかねません。出来るだけ予算内に工事を納めるように工夫しましょう。

 

工期が長引く

予定していた工期が長引く場合もトラブルの要因になります。それを未然に防ぐためには、工期に余裕を持って工事計画をする必要があります。追加工事にも対応できるよう、工程には余裕を持たせて進めましょう。

 

まとめ

大規模修繕工事とは、経年劣化やその他の外的要因によって不具合が発生した場合に回復させる工事であり、マンションのような集合住宅では定期的に実施されています。工事内容が増えると工期や費用がかかってしまいますが、建物の状態を保つためには必要な工事と言えるでしょう。心地よい住環境を整えるためにも、定期的な実施が必要です。

 


SHARE