JVとはどのような仕組み?結成する理由やメリット・デメリットを解説!
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メリット

JVとはどのような仕組み?結成する理由やメリット・デメリットを解説!

2023年4月10日

建設業界でよく聞くは、Joint Venture(ジョイントベンチャー)の略称で、大規模なプロジェクトを行う際に、よく耳にする言葉です。建設業界で働く人はもちろんのこと、街づくりなどを行う企業に勤める方々もその意味を把握しておく必要があります。そこで今回は、JVの仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説します。業界に関わる方は最後までご覧ください。

 


 

JV(ジョイントベンチャー)とは

建設業におけるJoint Venture(ジョイントベンチャー)とは「共同企業体」を指します。呼び方は、頭文字をとって「JV」とよく言われています。共同企業体という組織はふだん聞き慣れませんが、建設業ではよく行われることです。通常、ある工事を受注したとき、担当するのは一社になります。しかし、JVでは複数の企業が請け負うことになります。扱いとしては「組合」に分類され、法人ではなく「事業組織体」になります。あくまでもプロジェクトごとの組織であるため、工事が完了した場合、JVは解体されます。

これは主に大規模工事で作られる組織です。例えば、トンネルや橋、高層ビルといった建造物を作るとき、専門的なスキルや管理者や作業員など、様々な観点から人が必要になります。そういった場合にJVを組むことによって、それぞれの得意分野を活かすことができるのです。単体ではできない規模の工事が請け負えるという点が、JVのメリットのひとつとして挙げられます。

 

JVを組む理由

JVを組む理由は様々ですが、大きくは下記の3つにあります。

信用力や融資力が拡大する

一つ目は「信用力や融資力が拡大すること」です。建設工事は多額の資金を必要とすることがあります。そんなときに、複数の建設業者がJVを結成して資金を出し合うと、負担が分散し実現性が高くなります。また、ゼネコンなどの大手企業が数社集まるとなると、その分の期待値や信用度が増します。

 

技術力や作業員が担保できる

二つ目は「技術力や作業員が担保できること」です。大規模工事の場合、必要なスキルを持っている企業を探すことが難しかったり、そもそも人材が不足していたりすることが多々あります。そのためJVを組むことによって、各企業の強みやノウハウを持ち寄ることができます。さらに、施工管理者や作業員などの人材も確保することができ、大規模工事を行う技術力や作業員を担保できます。

 

リスクの軽減

三つ目は「リスクを軽減できること」です。JVを組む工事は大規模のものが多いので、工事期間も長期にわたります。そのため、ある一つの会社がその工事に人員をかけすぎると、万が一工事が中止になってしまった場合、赤字等のリスクが大きくなってしまいます。そのため人員を必要最小限に留めることができると、その分万が一工事が失注してしまったときのリスクが軽減されます。

 

JVの種類

JVには主に下記の4種類があります。

  • 特定JV(特定建設工事共同企業体)
  • 経常JV(経常建設共同企業体)
  • 地域維持型JV(地域維持型建設共同企業体)
  • 復旧・復興JV(復旧・復興建設工事共同企業体)

 
以下ではJVの4つの種類について紹介します。

特定JV(特定建設工事共同企業体)

一つ目は、特定JVです。特定建設工事共同企業体のことで、特定の建設工事の施工を目的として工事ごとに結成される共同企業体を指します。工事が完了すれば解散することとなる、特定の物件のみに組まれる企業体です。
特定JVの特徴は、単発発注の原則を前提に組織が作られるところです。工事の規模や難易度、特徴などを検討し、共同企業体として施工が必要と認められた場合にのみ活用されます。つまり、単体企業では工事できないほどの大規模な案件はもちろんですが、技術的に難易度の高い工事は特定JVとして工事を行います。さらに、大手ゼネコンと地元建設業者でJVを組む場合は、大手企業のノウハウを地元企業へ共有できるというメリットが期待できます。
ただしこのような場合は、技術的に不適格な業者が参入して、施工不良や欠陥工事とならないように注意が必要です。対象工事に合わせて、適切な構成員数等を考え、明確な基準に基づく適正な活用が不可欠になります。

 

経常JV(経常建設共同企業体)

二つ目は、経常JVです。経常建設共同企業体のことで、各企業が経営力・施工力を強化する目的で結成する共同企業体を指します。中小建設業者や中堅建設業者にとって、継続的な協業関係を確保することは、経営力や施工力の強化につながります。つまり、継続的な協業関係を確保することで、一つの企業では対応できない工事規模を行う目的で結成されます。
経常JVを組むと、単体企業同様に競争入札の参加資格を申請することが可能になります。ただし、経常JVとして申請をしている「業種」に係る指名競争入札について、経常JVの構成員を単体企業として指名することは行わないなど、取り扱いに制限がかかることもあります。

 

地域維持型JV(地域維持型建設共同企業体)

三つ目は、地域維持型JVです。地域維持型建設共同企業体のことで、地域の維持管理に不可欠な事業につき、継続的な協業関係を確保することによりその実施体制の安定確保を図る目的で結成する共同企業体を指します。これは国土交通省が進める、災害対応、除雪、インフラの維持管理などの担い手確保が困難となる恐れがある地域で導入を推進されている入札方法のひとつです。発注機関の入札参加資格申請時又は随時に地域維持型JVとして結成し、一定期間、有資格業者として登録されます。

 

復旧・復興JV(復旧・復興建設工事共同企業体)

四つ目は、復旧・復興JVです。復旧・復興建設工事共同企業体のことで、大規模災害からの円滑かつ迅速な復旧・復興を図るために結成する共同企業体を指します。また、技術者・技能者の不足や建設工事需要の急増等への対応として、地域に精通している被災地域の地元の建設企業の施工力を強化する目的もあります。発注機関の入札参加資格申請時または随時復旧・復興JVとして結成し、一定期間、有資格業者として登録されます。

 

JVの出資比率とは

JVの出資比率は、通常2社であれば基本的に50%ずつとし、一方が支配するのではなく、両社で平等とすることが多いです。もちろん、複数者で出資比率が異なることもあります。例えば、A社50%、B社30%、C社20%とした場合は、出資に応じて資金や人員などを調整して工事を行うこともあります。

 

JVの施工方式

JVの施工方式には、甲型JV(共同施工方式)乙型JV(分担施工方式)の2つの方式があります。下記ではそれぞれの特徴を解説していきます。

甲型JV(共同施工方式)

甲型JVとは、共同施工方式のJVを指します。この特徴は、1つの工事について、あらかじめ定めた出資比率に応じて、各構成員が資金、人員、機械等を拠出して共同施工する点にあります。この「出資」とは、財産的価値のあるものすべてが対象となります。その出資の時期は、共同企業体の資金計画に基づき工事の進捗に応じて決定されます。

 

乙型JV(分担施工方式)

乙型JVとは、分担施工方式のJVを指します。この特徴は、1つの工事を複数の工区に分けて、各構成員がそれぞれの担当工区を施工する方式である点にあります。共同施工の甲型JVとは異なり、乙型JVでは工事箇所別に分担して作業します。共通の経費負担などは発生するものの、経費や利益は各企業で計上できる点がポイントです。ただし工事全体の責任は、連帯責任として発生します。

 

JV結成のメリット

建設業におけるJV結成のメリットについて解説します。メリットは下記の5つです。

資金力が拡大する
一つ目は「資金力の拡大」です。とくに、経常JVなどの場合は単体では参加できない工事の入札に参加できることもあるでしょう。また、単体では行えないような大規模の工事を受注できると、施工実績の幅が広がります。資金力が拡大することで、様々な恩恵が受けられるのです。

 

リスクを減らせる
二つ目は「リスクを減らせる」ことです。注力していた大規模工事が万が一失注したとき、企業としては赤字になる恐れがあります。しかし、他の企業とJVを組みながら取り組めば、人員を分散しながら大規模工事に挑戦できます。

 

技術力の向上が期待できる
三つ目は「技術力の向上が期待できる」ことです。たとえば大手ゼネコンと地方建設企業がタッグを組むと、大手企業のノウハウを地方の企業に伝えることができるため、単体で工事を行うだけでは得られない「学び」が得られるはずです。

 

受注可能な範囲が広がる
四つ目は「受注可能な範囲が広がる」ことです。先ほどの「資金力拡大」と同様、単体では参加できないような入札案件にも参加できるようになるため、受注可能な幅が広がります。特に専門性の高い事業を行っている企業であれば、遠方からの声がかかることもあるでしょう。

 

施工がスムーズになる
五つ目は「施工がスムーズになる」ことです。JVを組むと共同体の責任企業が中心となり、工事全体をまとめます。つまり、そうでない企業は自分の任されたエリアの作業に集中できるため、工事をスムーズに進めることができます。また、他の企業の進捗なども見ることができ、色々な学びや刺激が得られるでしょう。

 

JV結成のデメリット

続いて、JV結成のデメリットを解説します。

親会社の影響が大きい
一つ目は「親会社の影響が大きい」ことです。出資比率の最も多い企業は、工事の事前業務から現場乗り入れまでの見積業務や入札金額決定、受注契約や協力会社の発注などの決定権があります。そのため下請けとなる企業は、デメリットを理解した上で参加することが必要になります。

 

利益や責任が連帯になる場合がある
二つ目は「利益や責任が連帯になる場合がある」ことです。甲型JVでは、出資比率に応じて利益が配分されます。つまり自社の工事で得られる利益だけでなく、万が一他社の工事で損益になった場合も自社に影響してくるということです。その一方で、乙型JVでは自社工事の利益がそのまま得られるものの、他社工事に関する品質や工程・安全に関しても連帯して責任を負わなければなりません。

 

まとめ

建設業におけるJV(ジョイントベンチャー)とは、共同企業体のことを指します。ある一つの建設工事を受注し、施工を複数の企業で行うという方法です。このJVには様々な種類や方式があり、必要に応じて取られる組織体が異なります。建設業に勤めている方やこれから転職を検討している方は押さえておくようにしましょう。

 


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