玉掛けとは?種類や作業内容、必要な資格についても解説
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玉掛けとは?種類や作業内容、必要な資格についても解説

2023年3月8日

建設現場や製造現場などでは、「玉掛け」という仕事があります。聞きなれない仕事ですが、建設現場や製造現場では、なくてはならない仕事になります。そこで今回は、玉掛けの概要や必要な道具、玉掛けの方法、必要な資格など、「玉掛け」の実態について解説します。

 


 

玉掛けとは

玉掛けは、建設現場や製造現場などでクレーンにより重い荷物を上げる際に、フックに荷物を巻いたロープを掛けたり外したりする作業を指します。建設資材などの重い荷物を高所に持ち上げる作業のため、危険が伴います。使用するロープの強度や長さ、クレーンで吊った際の角度やバランスが保たれているかなど安全性に配慮する必要があるため、知識や経験だけでなく、資格も必要になります。

名前の由来

「玉掛け」という名前の由来は、明確ではありません。有力説としては、掛け軸を掛ける際、宝石=玉(琥珀(コハク)や瑪瑙(メノウ))を使用したことから、よく似た作業であるフックに荷物を掛けることを、「玉掛け」と言われるようになったという説が有力です。

 

どんな作業?

玉掛けは、現場の安全を確保する重要な作業です。重い建材や資材をクレーンで持ち上げる作業となるため、フックへのロープの掛け方が悪いと、高所から建材や資材を落下させるリスクがあるからです。
荷物が高所から落下した場合、怪我だけでなく命の危険性も伴います。そのような事態を回避するためにも、正しい玉掛けを行うことが重要となります。

 

玉掛けに必要な用具

玉掛けに必要な道具には、ワイヤロープベルトスリングがあります。

ワイヤロープ

「クレーン等安全規則」の第213条により、玉掛けで使用するワイヤロープは、安全係数6以上と規定されています。また、同規則の219条により、エンドレスでないワイヤロープに関しては、両端にフック・シャックル・リングまたはアイ※1を備えたものでなければならないと規定されています。

※1 アイ:ワイヤロープの端を輪(目の形)にしたもの。アイをフックに掛けて吊る。

 

第213条
事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるワイヤロープの安全係数については、6以上でなければ使用してはならない。

第219条
事業者は、エンドレスでないワイヤロープ又はチェーンについては、その両端にフック、シャックル、リング又はアイをそなえているものでなければ、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具として使用してはならない。

※参考元:「クレーン等安全規則」中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター

 

ワイヤロープの端末加工は、以下の2種類です。

アイスプライス(編み込み)加工 ストランドをワイヤロープの間に差し込んで両端にアイを作る方法
圧縮止め(ロック)加工 アイの首部に専用の金具で留める方法。金具を機械で圧縮するので、短時間での加工を実現

 

ベルトスリング

ベルトスリングは、合成繊維でできた平らなベルト状の紐のことです。柔軟性に優れた上に軽いため、扱いやすく作業効率が良くなります。一方でデメリットとしては、熱に弱く鋭利な荷物の場合、切れて荷物を落下させるリスクがあるため、注意深く使用する必要があります。

 

玉掛けの方法

玉掛けの方法としては、フックに掛ける方法吊り荷に掛ける方法があります。それぞれを以下にて解説します。
フックに掛ける方法には、目掛け・半掛け・あだ巻き掛け・肩掛けの4種類があり、つり荷に掛ける方法には、目掛け・半掛け・目通し・あだ巻き掛けの4種類があります。

フックに掛ける方法 つり荷に掛ける方法
目掛け ワイヤロープのアイをフックに掛ける方法で、以下のように表現する。

  • ワイヤロープを1本使用する場合:1本吊り
  • ワイヤロープの数が増える場合:2本吊り、4本吊り

目掛けは最も一般的で安全な掛け方というメリットがあるが、非対称の荷物に適さないというデメリットがあるため、荷物の形状により使い分ける必要あり。
ワイヤロープのアイを荷物の吊り手に掛ける方法。便利で扱いやすく、バランスの良い荷物に適しているが、ワイヤロープが緩むと荷物が落下するリスクあり。
半掛け ワイヤロープのアイをフックに掛けない方法で、使用するワイヤロープの数により2本吊り、6本吊りと表現する。
半掛けは荷物の側に吊り手があるものや定型的な荷物には適応するが、重心が中心にない荷物や重心の位置が高い荷物には適応しない。
ワイヤロープを荷物に回して掛ける方法。吊り荷に掛ける方法の中では一番単純な方法のため扱いやすいが、半掛けは吊り角度が大きい場合不安定になる。
あだ巻き掛け ワイヤロープを1回転させて巻き付ける方法。
あだ巻き掛けはワイヤロープを1回転させてフックに巻き付けるため、滑るリスクが無いが、ワイヤロープに癖がつくというデメリットがある。そのためあだ巻き掛け作業終了後は、ワイヤロープの修正が必要。
ワイヤロープを荷物に1回転させて巻き付ける方法。滑りにくいというメリットがあり、長尺の荷物に適しているが、手間がかかるというデメリットあり。
肩掛け ワイヤロープをフックの肩部分に巻き付ける方法。ワイヤロープ1本のみを掛ける作業となり、2本以上を掛けることはほとんどない。
肩掛けはワイヤロープに癖が付きにくいため、肩掛け作業終了後にワイヤロープを修正する手間は無いが、ワイヤロープを両フックに掛けることで重なりが生じて擦れてしまい、荷物が落下するリスクがあるため注意が必要。
目通し(絞り) 荷物をワイヤロープで目通しして絞る方法。荷物とワイヤロープとの滑りを防ぎ、絞り込むことにより摩擦力が大きくなり滑りにくいというメリットがあるが、ワイヤロープの絞り込まれた箇所が傷み、徐々に強度が小さくなるというリスクもある。ワイヤロープの状態を確認して、傷みが酷い場合は新品に交換する。

 

玉掛けに必要な資格

続いて、玉掛け作業を行う場合に必要な資格について解説します。以下のように、扱う荷物の重量に応じて必要な資格が異なります。

  • 1t未満の玉掛け作業:玉掛け特別教育
  • 1t以上の玉掛け作業:玉掛け技能講習

 

玉掛け特別教育

重量1t未満の荷物の玉掛け作業の場合、各教習所や事業所で行われる「玉掛け特別教育」の講習を受講する必要があります。学科は5時間、実技は4時間の講習となり、計9時間受講すれば修了証が発行されます。講習料は、テキスト込みで15,000円以上となります。なお、試験はありません。

 

玉掛け技能講習

重量1t以上の荷物の玉掛け作業の場合、各都道府県労働局に登録した事業者により「玉掛け技能講習」を受講する必要があります。学科は12時間、実技は7時間の講習となり、計19時間受講すれば修了証が発行されます。(玉掛け特別教育の修了証保持者、クレーン運転免許保持者は学科・実技がある程度免除されます。)講習料は、テキスト込みで20,000円以上となります。玉掛け特別教育同様、試験はありません。

 

玉掛けの仕事

最後に、玉掛けの仕事に関して、年収と向いている人について解説します。

玉掛けは稼げるのか

玉掛けは資格が必要で危険な作業を行う仕事となるため、年収も比較的高い傾向にあります。下表にて、2017年~2019年の玉掛作業者の平均年収を男女別にまとめました。

西暦 平均年収(男性) 平均年収(女性)
2017年 409万円 326万円
2018年 410万円 275万円
2019年 438万円 337万円

 

玉掛け作業に向いている人

玉掛け作業は荷物をクレーンのフックに掛け外す作業となるため、掛ける位置にズレや緩みが生じると、荷物が傾いたり揺れたりして、最悪の場合落下するリスクを伴います。そのため、注意深さや慎重さが求められるため、常に完璧を求める人や丁寧に作業できる人が向いているといえるでしょう。

 


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