2023年3月7日
コンクリート構造物を建設する際、最も重要な工事がコンクリート打設であり、この作業が構造物の強度や品質に大きく影響を及ぼします。そこで今回は、コンクリート打設手順や打設方法、注意点について解説します。生コンクリートを打設する各工程での注意点に配慮しながら工事を進めていくことにより、高い品質のコンクリート構造物を構築することが可能となることがわかりますので、建設業界にこれから従事する方などはぜひご覧ください。
コンクリート打設は、板材で構成された型枠の中へ生コンクリートを流し込み、充填させる作業です。
生コンクリートは工場で製造されますが、時間の経過とともに硬化が始まります。ミキサー車などで工事現場に運搬した生コンクリートを、硬化する前に型枠内へ充填させる必要があります。型枠内には鉄筋が配筋されており、生コンクリートを流し込むだけでは隅々まで充填させることはできません。そのため、品質の良いコンクリートを打設するには、的確な品質管理のもとで行います。設計図書や仕様書で指定された形状や強度を出すために、下記の打設手順が必要になります。
コンクリート打設を行う際、コンクリート打設計画書を作成します。コンクリート打設計画書の内容は以下などで、コンクリート打設に伴う全情報を記載します。
コンクリート打設計画書をもとに関連工事業者と打合せや調整を行いますので、とても重要な資料となります。
生コンクリートの打設工法には下記の3つがあり、工事現場の環境条件に応じて打設工法から相応しい工法を選定します。
生コンクリート打設は、鉄筋の配筋工事が完了し、型枠の設置が終わり、コンクリート打設前検査合格後に行われます。
設計図書通りの高さで仕上げるために、仕上げ面から1,000mm程度高い位置に高さの基準点を設置します。土間や床スラブに勾配がある仕上げ面の場合は、打設高さの基準点を設置します。仕上げ面の高さを正確な寸法で確保するために、「天端ポイント」という便利なツールがありますので、ぜひ使用してみるとよいでしょう。
型枠内部にある鉄筋の削りゴミや型枠設置の際に生じた木の粉などを取り除きます。型枠の一部に排水口を設けておき、高圧水洗浄を行うと、スムーズに清掃できるのでオススメです。
型枠内にある金物や構造スリット※1の位置をわかりやすくするため、ラミネートした看板などの目印を型枠外側に設置しておくと、生コンクリートの充填確認が容易となり、品質向上につながります。
※1 構造スリット
柱と壁の間などに意図的に隙間(スリット)を設け、緩衝材の役割を果たすもの。柱と壁を構造的に分離し、地震の揺れに伴い壁が壊れた際に連動して柱が壊れないようにするための隙間。
コンクリート打設当日に、関係する作業員全員に対して打設前の周知会を実施します。関係者全員で情報共有することにより、質の良いコンクリート打設を行うことができます。
受入検査は、ミキサー車などで搬送されてきた生コンクリートを工事現場で受入れする際、計画通りの品質であるかを点検する検査のことです。
コンクリートの品質は、建物の強度(耐久性・耐震性・耐火性・耐風性など)に直接影響を及ぼします。そのため、設計図書や仕様書通りの品質・強度が確保されているかの検査が必要になるのです。生コンクリート受入検査項目としては以下などを行い、品質の有無を点検します。
生コンクリート打設は、打ち重ね時間を考慮して設定されます。
生コンクリートは、練り混ぜを行ってから打設が完了するまでの時間が規定されています。
生コンクリートの打ち重ね時間は、コンクリートを2層以上打設する場合、上下の層が一体となるために決められた時間のことです。
打設間隔時間が開くとコールドジョイント※2になり、ひび割れ・漏水が発生し建物の耐久性を低下させる原因となります。
※2 コールドジョイント
コンクリートの打ち重ね時間を過ぎて打設した場合、前に打設したコンクリートと後から打設されたコンクリートが一体化しない状態となり、打ち重ねした箇所に不連続な面が生じること。
上記をまとめると下表の通りです。
外気温 | 25℃以下の場合 | 25℃超の場合 |
---|---|---|
練り混ぜから打ち込み完了までの時間 | 120分以内 | 90分以内 |
打ち重ね時間間隔 | 150分以内 | 120分以内 |
生コンクリートを鉄筋が配筋された型枠内に十分に行き渡らせるために、締め固めを行います。締め固めの方式には、内部振動方式と型枠振動方式があります。
内部振動方式で一般的に採用される方法は、振動棒を打設直後のコンクリート内部に挿入して締め固める方法です。型枠内部のコンクリートに残留する空気層を無くすことにより、隅々まで充填させます。特に鉄筋の配筋が複雑に交差している箇所は、コンクリートが行き渡りにくいので入念に行います。
また、打ち重ねの場合は先に打設したコンクリートまで振動棒を差し込むことで、コールドジョイントの抑止効果となります。
型枠振動方式は、型枠の外部から木槌でたたく方法や、型枠用振動機を使用して振動を与える方法です。型枠を木槌で叩く音により、生コンクリートが隙間なく充填されているかを確認できます。
生コンクリート打設後、表面が滑らかになるようにトンボやコテを使用して仕上げを行います。仕上げには、均し・木鏝押さえ・金鏝均し・金鏝仕上げがあります。
均しは、トンボを用いてコンクリート表面を滑らかにする仕上げ方法です。主に捨てコンクリートの箇所で行われます。
木鏝押さえは、トンボで均しを行った後、木鏝を用いて滑らかにする仕上げ方法です。建物外壁のタイル張りなど、コンクリート表面に新たに下地を施す場合に行われます。
金鏝均しは、トンボで均しを行った後、金鏝を用いて滑らかにする仕上げ方法です。建物内部のレベリングモルタルや防水層などで行われます。
金鏝仕上げは、コンクリートがそのまま仕上げになる場合や塗装仕上げの場合に行われます。
続いて、コンクリート打設工法について解説していきます。コンクリート打設工法には下記の3工法があります。
配置完了したコンクリートポンプ車の後方にミキサー車を停車させ、生コンクリートをコンクリートポンプ車のブーム(配管)を経由して打設現場の型枠内へ圧送し、流し込む工法です。コンクリートポンプ車の性能により、作業範囲や高さ、圧送量に違いが出ます。
生コンクリートの打設を決められた時間内に完了させるために、コンクリートポンプ車のブームで全数量が打設できるように計画します。
ミキサー車などで運搬された生コンクリートをバケットに移し替え、クレーンなどで打設現場に搬送し打設する工法です。
コンクリートバケット工法には下記のメリットがあります。
ミキサー車で運搬された生コンクリートを手押し車に移し替え、打設現場まで搬送し打設する工法です。工事現場において、狭い範囲の捨てコンクリート打設など少量の打設の際に用いられます。
コンクリート打設の注意点は主に、時間管理や受入れ検査、雨の日は避けること、適切な養生となります。
上記でも解説した通り、生コンクリートは打ち込みの際に以下が規定されています。
その規定時間を超過すると、コールドジョイントを生じかねません。そうなると建物の強度に影響を及ぼすため、建物の品質管理上、時間管理を徹底させる必要があるのです。
また、品質管理上、受入検査の徹底も必要です。スランプ試験・空気量試験・塩化物量試験を行い、設計図書や仕様書通りの強度になるかの点検・確認を怠らずに行うことが重要になります。
コンクリートは、セメント・水・細骨材(砂)・粗骨材(砂利)からできているため、生コンクリートの打設は雨の日を避けて行います。コンクリートの強度は、セメントと水の化学反応(水和反応)により出現します。コンクリートは、必要な強度を確保するためにセメントや水の割合を算出しています。そのため、雨の日に生コンクリートを打設すると、水の割合が変わってしまい、必要な強度が出ない可能性が高くなってしまうからです。
コンクリートは、急激な乾燥や固化前の衝撃を与えるとひび割れや硬化不良の発生につながるため、コンクリートが露出する箇所に対して、散水やシートをかぶせて湿潤養生を行います。湿潤養生を行うべき日数が設定されており、以下により期間が決まります。
建物の計画供給期間の級 | 短期及び標準(10N/㎟以上の強度発現) | 長期及び超長期(15N/㎟以上の強度発現) |
---|---|---|
急強ポルトランドセメント | 3日以上 | 5日以上 |
普通ポルトランドセメント | 5日以上 | 7日以上 |
その他のセメント | 7日以上 | 10日以上 |
また、湿潤養生に代わりになる工法として、生コンクリート打設後の仕上げ時に薬剤を散布する工法もあり、散水などの手間を省くことができます。
コンクリート打設手順や打設方法、注意点について解説しました。質の高いコンクリートの打設は、建物の強度に大きく影響します。設計図書・仕様書通りの建築物を構築するために、事前準備をしっかり行い、工事に関わる作業員の情報共有を徹底しながら、作業を進めることが重要になります。