2023年1月25日
建設現場で発生した土は、残土と呼ばれています。残土が発生した場合、廃棄物処理法に応じて適切な方法で処理する必要があり、間違った運用をすると処罰の対象になってしまいます。
そこでこの記事では、残土の種類や残土による崩落の危険性、残土に関する自治体の取組み、残土処分の費用、残土処分費を抑える方法について解説します。
残土の処理を誤れば崩落の危険性があるため、20都府県においては土砂条例を制定し、崩落を防御する取組みがなされています。同時に、残土の有効活用に関する取組みもなされていることがわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。
残土とは、住宅などの建設や外構工事の場合、建物や製品を設置する基礎を造る際に土地を掘削した時に発生する余分な土のことです。
残土は産業廃棄物を含む可能性が高く、産業廃棄物に分類されるケースもあります。残土に含まれる可能性の高い産業廃棄物は、金属屑、紙屑、建設時に生じた木材、コンクリートの塊、汚泥、有害物質などです。
建設現場で生じた土を残土と一括りにして言いますが、土が生じた場所によりランク付けされ、ランク付けされた残土は、異なる残土処分場で処理されるのが基本です。
以下では、ランク別の残土の特徴やコーン指数※1を説明します。
※1 コーン指数:地盤強度を表す指標
第1種建設発生土は、砂や礫などです。コーン指数は、規定されていません。第1種建設発生土は、以下などの用途に使用されるケースが多いです。
第2種建設発生土は、砂質土や礫質土などで、コーン指数は800kN/㎡以上です。第2種建設発生土は、以下などの用途に使用されるケースが多いです。
第3種建設発生土は、粘性土などで施工性が確保されているものです。コーン指数は400kN/㎡以上です。第3種建設発生土は、以下などの用途に使用されるケースが多いです。
第4種建設発生土は、第3種建設発生土以外の粘性土で、コーン指数は200kN/㎡以上です。第4種建設発生土は、以下などの用途に使用されるケースが多いです。なお、水面の埋め立て以外で使用するケースでは土質改良が必要になります。
泥土は建設現場で発生する泥状の土で、コーン指数は200kN/㎡未満です。したがって、上記のランク付けされた残土の中では、一番強度が低い土になります。泥土は、土質改良後に水面の埋め立てに使用されますが、再利用できない泥土は汚泥として処理されます。
残土処分場の多くは、森林法や砂防法などの法令により、土地の形質変更について規制が行われています。しかし、一部の残土処分場では、無許可もしくは許可条件に違反した行為が行われており、過去には崩落に至る事案も発生しました。
また、一部の残土処分場では、崩落には至らないものの、以下などが指摘されています。
以下では、過去の崩落事案を下表にまとめました。
年月日 | 発生地 | 被害状況 | 対応法令 |
---|---|---|---|
平成26年2月 | 大阪府豊能町 | 通行止め | 砂防法、森林法 |
平成24年11月 | 埼玉県皆野町 | 住宅2棟が全壊、河道へ流入、通行止め | 森林法、砂防法、地すべり等防止法 |
平成24年9月 | 滋賀県大津市 | 河道へ流入 | 土砂条例(大津市) |
平成22年7月 | 奈良県奈良市 | 通行止め | 砂防法 |
平成21年7月 | 広島県東広島市 | 民家に流入し1名死亡、1名負傷 | 森林法、土砂条例(東広島市) |
平成21年3月 | 山梨県上野原市 | 河道へ流入、山林・農地への流入 | 土砂条例(上野原市) |
平成19年6月 | 茨城県鹿嶋市 | 農業用水水源地に流入、遊歩道の寸断 | 土砂条例(鹿嶋市) |
※参考元:「建設発生土の取扱いに関わる実務担当者のための参考資料」(国・地方公共団体等内部用)平成29年8月 国土交通省
土砂条例は、平成9年に千葉県で制定された条例をはじめとして、47都道府県のうち20都府県において制定されました。区市町村または市レベルで見ると、以下において制定されました。
土砂条例を制定している地方公共団体の分布状況は、関東地方以南の大都市周辺や四国地方に集中している傾向があります。
土砂条例の目的は、以下のとおりです。
残土に関する自治体の取組みとしては、「既存の法令や条例の下で崩落の防止のための取組み」と「建設発生土の有効利用と排出を適切に行うための取組み」があります。
● 既存の法令や条例の下で崩落の防止のための取組み
があります。
● 建設発生土の有効利用と排出を適切に行うための取組み
建設発生土の有効利用の促進としては、以下などがあります。
建設発生土の排出を適切に行うための取組みとしては、以下などがあります。
残土処分費の内訳は、重機費用・運搬費用・人件費・残土処分場の受入れ価格で構成されます。残土処分量が多いほど残土処分費は割安になり、逆に残土処分量が少ないと、重機利用ではなく手作業になる場合があるため作業効率が悪く残土処分費は割高となります。したがって、残土処分費は小分けして残土処分場へ運搬するよりも、まとめて運搬する方が割安になるのです。
残土処分費は、「残土処分費」と「ガラ混じり残土処分費」に分類されます。工事現場により、残土運搬費(運搬距離・地域の道路事情により左右)と残土処分場の受入れ価格が異なるため、残土処分費・ガラ混じり残土処分費は変動します。
首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の残土処分費の目安は、約9,000円(2t車)で、運搬車両の重量サイズによって決まります。
下表は、運搬車両における重量サイズ別の残土処分費(目安)をまとめたものです。
運搬車両 | 残土処分費(目安) |
---|---|
2t車 | 9,000円 |
3t車 | 10,000円 |
4t車 | 12,000円 |
5t車 | 13,000円 |
7t車 | 17,000円 |
ガラ混じり残土処分費は、残土処分費よりも若干割高となり、首都圏のガラ混じり残土処分費の目安は、約10,000円(2t車)です。ガラ混じり残土処分費も同様に、運搬車両の重量サイズにより決まります。
下表は、運搬車両における重量サイズ別のガラ混じり残土処分費(目安)をまとめたものです。
運搬車両 | ガラ混じり残土処分費(目安) |
---|---|
2t車 | 10,000円 |
3t車 | 13,000円 |
4t車 | 16,000円 |
5t車 | 18,000円 |
7t車 | 20,000円 |
残土処分費を抑える方法は、主に以下などが挙げられます。
自社で残土処分場へ持ち込むと、残土処分費を抑えることができます。残土処分費の内訳の中で、残土処分場の受入れ価格よりも運搬費の占める割合の方が大きくなります。したがって、自社の運搬車両による残土処分場への持ち込みの方が費用を抑えることができます。
また、運搬効率・作業効率を上げるために、普段は残土を工事現場の一角に貯めておき、雨天で工事ができない時に残土をまとめて残土処分場へ持ち込むと、無駄を省くことができるのでオススメです。
残土処分業者と値引き交渉も、残土処分費を抑える手段になります。ただし、値引き交渉のタイミングは、工事の仕様が決定した後に切り出すようにするとよいでしょう。工事の仕様が決まる前に値引き交渉をすると、値下げ分を他の見積項目のグレードを落とすなど、工事品質に影響を及ぼす可能性があるからです。
残土の種類や残土による崩落の危険性、残土に関する自治体の取組み、残土処分の費用、残土処分費を抑える方法について解説しました。
建設現場で発生した土は5つに区分され、区分ごとに盛土・堤防建設に再利用されます。建設発生土の処分もしくは再利用については廃棄物処理法が関わり、間違った運用を行うと処罰の対象になりますので、注意深く処分もしくは再利用の判断をすることをオススメします。