2022年11月11日
土砂崩れとは、大雨などが原因で山や谷の土・石・砂などが崩れ、水と混じり一気に流れ出てくる現象です。比較的ゆるい傾斜の斜面が、雨や雪解け水がしみこんだ地下水によって、広い範囲に渡りすべり落ちていきます。2021年に起こった熱海の土砂災害も死者が出てしまうほどの大きな災害となりました。
そこで今回は、熱海で起きた土砂崩れの原因を振り返り、今後の対策について説明いたします。
2021年7月3日、静岡県熱海市伊豆山付近を襲った豪雨の影響で大規模な土砂災害が発生しました。逢初川(あいぞめがわ)の源頭部にあたる標高約390m地点から逢初川を流下し、大量の土砂が斜度11度の斜面を流れ下り、国道135号線及びビーチラインを突っ切り熱海港に達しました。土石流により被災した範囲は、延長約1㎞、最大幅約120mにわたり、死者は20名以上、行方不明者も続出しました。
日本は近年土砂災害が頻発しており、天候が不安定になりやすい梅雨から夏にかけて、増加する傾向にあります。土砂災害が起きたきっかけは豪雨でしたが、上流の盛り土が問題視され、土石流の原因が調査されました。
熱海の土砂崩れの原因は大きく4点が挙げられます。
順番に解説していきます。
熱海市伊豆山地区での土石流災害を受け、静岡県網代のアメダス観測所(土石流現場に最も近い観測所)の1940年から2021年までの降水量データを調査したところ、このときの雨は、7月1日〜3日にかけての熱海の降水量は411.5ミリに達し、3日間の降雨量は7月の歴史的な月平均値226ミリを上回るものでした。さらに今回の集中豪雨は、大量の雨によって地盤が緩み、土砂崩れにつながりました。
地盤が緩んでしまうと、弱くなった斜面が突然崩れることも想定できます。ただし今回の災害を調査したところ、土石流の起点の不適切に造成された「違法な盛り土」が被害をさらに拡大させたという指摘もありました。
静岡県の調べによると、施工業者は15メートルで約3.6万立方メートルを盛る計画であることを熱海に提出したそうです。しかし、実際のところ申請の2倍以上となる35メートル以上の約7万立方メートルを盛っていたことがわかりました。そして、そのうちの5万立方メートルが、今回の土砂流となりました。土砂崩れが起きたきっかけは豪雨ではあるものの、違法な盛り土も原因のひとつとなってしまいました。
今回の土石流の起点となった山間上流部は「集水地形」と呼ばれており、非常に雨が集まりやすい場所です。さらに、急な勾配をしている地形に住宅などが建っていたそうで、このような地形は土砂崩れが起きやすい場所でした。
実際、被害にあった熱海市伊豆山地区周辺は、ハザードマップ上の”土石流危険渓流”エリアとほとんど一致しており、土砂災害リスクが高い地域でした。
日本の夏の気候は亜熱帯高気圧に大きく影響されます。
そして日本でも、太平洋高気圧が気候変動によって勢力を拡大し、近年異常気象の被害を甚大化させています。
そもそも雨は、大気に含まれる水蒸気が源であり、冷却されて凝結した微小な水滴が雲を形成して雲の中で水滴が成長し、やがて重力により落下してくるものです。気候変動に関する報告書によると、気温が1度上がるごとに、大気が保持できる水蒸気は約7%増加するそうです。一般的に大気中の水蒸気量は、気温上昇とともに特定の変化率で増加する性質を持っており、強雨が増加している原因は、気温上昇に伴う大気中の水蒸気量の増加であると言えるでしょう。
熱海の土砂崩れへの考え得る対策は下記の4つです。
今回の土砂崩れが起きたきっかけは「歴史的な豪雨」によるものでした。そのため豪雨が発生する場合かつ土砂崩れの恐れがある地域で暮らす住民は安全な場所に避難することが大切です。
盛り土を建設する際に大切なのは、良質な盛土材料を用いて盛土内の地下水位が上がらないように排水設備を設けることです。そしてしっかりと締め固めることでより強固な盛り土が完成します。
今回の盛り土では、15メートルで約3.6万立方メートルを盛る計画に対し、実際は申請の2倍以上となる35メートル以上の約7万立方メートルを盛っていました。違法な盛り土は土砂崩れの原因のひとつになり得るため、法律を遵守した施工が必要です。
2016年の熊本地震で土砂崩れが多発した熊本県・阿蘇地域では、現在砂防ダムを建設中で10年ほどかけて約25カ所を整備するそうです。土砂崩れが想定できる場所には砂防ダムの増設を検討する必要があります。
熱海で起きた土砂崩れの原因は主に3点で、「歴史的な豪雨による地盤の緩み」「業者による不正な盛土が行われていた」「土砂崩れの高い地形であった」とされています。
きっかけは自然災害ではあるものの「業者による不正な盛土」に関しては今後の工事によって防ぐことができます。道路・鉄道盛土や宅地の盛土など様々な種類がありますが、盛土を建設する際には、良質の盛土材料を用い盛土内の地下水位が上がらないように排水設備を設け、よく締め固めることが大切です。土木工事に関わる方は、細心の注意を払い施工に携わるようにしましょう。