2022年10月6日
国内の住宅における建築構造には、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)、木造(W造)などがあります。中でも一番高い割合を占める建築構造は木造で、約7割を占めています。また、木造は大きく分類して木造軸組工法と木造枠組壁工法があります。
そこで今回は、「木造枠組壁工法」について取り上げ、木造住宅の種類や木造枠組壁工法のメリット・デメリットについて解説します。
木造住宅の種類は、大きく分類して「木造軸組工法(在来工法)」と「木造枠組壁工法」になります。
それぞれの特徴について解説していきます。
木造枠組壁工法は、枠材に構造用合板などのパネルを張付けて壁を造り、その壁を組み合わせることにより建物を建築する工法です。
建築規定により壁・床・天井の面を造り、その面を配置して建物を造り上げます。耐久性・耐震性・耐風性に優れた建物となり、建築工期も短期間で済むのが特徴です。
枠組壁工法の一つにツーバイフォー工法があります。ツーバイフォーとは、2インチ×4インチの角材で形成された枠材に、構造用合板などのパネルを張付けて壁や床を造る工法です。
ツーバイフォー工法では、2インチ×4インチの規格材を含めて6種類の規格材が用いられています。
① ツーバイフォー(2×4)材
② ツーバイシックス(2×6)材
③ ツーバイエイト(2×8)材
④ ツーバイテン(2×10)材
⑤ ツーバイトゥエルブ(2×12)材
⑥ フォーバイフォー(4×4)材
木造枠組壁工法のメリット・デメリットについては、後ほど詳しく解説します。
木造軸組工法は、日本古来の建築構造で、現在においても最も多く採用されている建築構造の一つです。
柱・梁・桁・土台などで軸組み(骨組み)を形成し、建物を線で構成させるイメージです。
強度は柱・梁・桁の太さにより左右され、一般的な住宅では柱材として120mm四方の角材が用いられています。
耐久性は利用のされ方により左右されますが、住宅の場合30年~60年は住むことができます。最近では、「100年住宅」と呼ばれるようになり、建築寿命は建材の進歩とともに延びています。
ちなみに法隆寺などの建築物は、大黒柱などに太さ500mm前後のひのき材が用いられており、築1,200年以上経過した現在でも、その威容を誇っています。
以上の木造軸組み工法のメリット・デメリットをまとめると、下表の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
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木造枠組壁工法のメリットは、主に以下などが挙げられます。
面で形成された六面体により構造強度を発揮する建築構造のため、台風などの強風にも強く、耐震性にも優れた建築構造となります。
建築材料が規格化・システム化されるため、建設現場での作業量が短縮され、木造軸組工法と比較すると短い工期で建物を建てることができる点はメリットの一つです。
枠組みによる面を連結させることで隙間が生じにくくなりますので、気密性・断熱性に優れている点もメリットの一つといえます。
使用する角材の規格が統一されており、釘の大きさや打ち込む間隔まで細かい規定があるため、職人の技術や経歴に左右されにくいというメリットがあります。
一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会では、ツーバイフォー工法建築物で使用する構造用部資材について、主に設計者や施工者を対象として一覧表を作成・公開しています。
下表は、公表されている面材※1一覧表の一部です。
項目 | 機構仕様書 | 大臣認定 | JIS・JAS |
---|---|---|---|
構造用合板 | 4.2.2.1 | 接合具との組み合わせによる壁倍率 | JAS233 特類1類 |
構造用パネル(OSB) | 4.2.2.1 | 接合具との組み合わせによる壁倍率 | JAS360 1級~4級 |
パーティクルボード | 4.2.2.3 | 接合具との組み合わせによる壁倍率 | JIS A 5908 |
ミディアムデンシティー ファイバーボード |
4.2.2.2 | 接合具との組み合わせによる壁倍率 | JIS A 5905 |
ハードボード | 4.2.2.2 | JIS A 5905 | |
硬質木片セメント板 | 4.2.2.2 | JIS A 5417 | |
フレキシブル板 | JIS A 5430 | ||
パルプセメント板 | 接合具との組み合わせによる壁倍率 | ||
シージングボード | 4.2.2.2 | JIS A 5905 | |
火山性ガラス質複層版 | 4.2.2.2 | JIS A 5440 | |
石膏ボード | 4.2.2.2 | 接合具との組み合わせによる壁倍率 | JIS A 6601 |
※1 面材:面材とは、床材、壁材または屋根下地で、枠組にくぎ打ちする下張り材を意味し、枠組材と一体となって面内せん断力、面外曲げ、衝撃力等に抵抗する重要な役割を果たす材料のこと
木造枠組壁工法のデメリットは、主に以下などが挙げられます。
壁を形成する枠材の中には、上端から下端に差し込む角材が数本以上入ります。その1本1本が建物自重を支える強度を負担するため、切断や取り払うことができません。そのため、木造軸組工法のように大きな開口を設けることができない点がデメリットの一つといえます。
気密性・断熱性が高いというメリットの裏返しで、内外の温度差が大きくなる傾向があり、結露が生じやすく湿度が高くなります。そのため、カビやダニ、シロアリなどが発生しやすい環境になる点もデメリットといえるでしょう。それらを発生させないためにも、結露対策が必要となります。
枠材で形成された面により部屋が構成されるため、間取りの自由度は低くなります。
木造軸組工法は、柱・梁・桁・土台が建物の自重を支えて耐震・耐風強度を保有するため、木造軸組工法は壁自体を取り払い、部屋を連結させて広くすることができます。
一方で木造枠組壁工法は、壁自体が建物の自重を支えて耐震・耐風強度を保有するため、木造軸組工法のように壁全体を取り払うことができず、リノベーションするにもかなりの制約を受けます。
例えば、子供がいる世帯で将来子供が成人して巣立ち、夫婦二人世帯になった際、ライフスタイルの変化に合わせてリビングを大きくするなどの間取り変更を検討する場合、木造軸組工法であれば容易にできますが、木造枠組壁工法では困難になる点はデメリットといえるでしょう。
以上、木造枠組壁工法のメリット・デメリットをまとめると下表の通りです。
メリット | デメリット |
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木造住宅の種類や木造枠組壁工法のメリット・デメリットについて解説しました。
木造枠組壁工法の最大のメリットは、耐震性・耐風性に優れ、建築品質が保たれやすい点にあります。
木造住宅を検討する際、将来的に間取りの変更などリノベーションを検討しなくても良いという場合は、木造枠組壁工法での建築を検討されることをおすすめします。