2022年9月6日
建築予定地に建物を建てる際、その土地に接する道路の属性や状態を確認することは最重要事項と言っても過言ではありません。場合によっては、建物が建てられない土地かもしれないからです。
今回は、建築基準法上の「道路」の概要や接道義務、接道義務が適用されない地域、道路の調べ方、私道の概要について解説します。建築予定地に接する道路によって資産価値が大きく異なるため、入念な道路調査の重要性が理解できますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
建築基準法の道路とは、下表の道路をいいます。(建築基準法第42条第1・2項)
建築基準法第42条 | 道路の内容 | |
---|---|---|
第1項 | 第1号 | 道路法による道路で、幅員4m以上のもの |
第2号 (開発道路) |
都市計画法・土地区画整理法・旧住宅地造成事業に関する法律などによる道路で、幅員4m以上のもの | |
第3号 (既存道路) |
都市計画区域もしくは準都市計画区域の指定などの際(建築基準法施行時)、現に存在する道路で、幅員4m以上のもの | |
第4号 (計画道路) |
道路法・都市計画法・土地区画整理法などによる新設又は変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもので、幅員4m以上のもの | |
第5号 (位置指定道路) |
道路法・都市計画法・土地区画整理法などによらないで築造する道路で、築造する者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもので、幅員4m以上のもの | |
第2項(みなし道路) | 都市計画区域もしくは準都市計画区域の指定などの際(建築基準法施行時)、現に建築物が建ち並んでいる幅員4m未満の道路で、特定行政庁が指定したもの |
※参考元:「建築基準法」e-GOV法令検索
建築基準法施行時、建築物が建ち並んでいる幅員4m未満(1.8m以上)の道路で、特定行政庁が指定したものは建築基準法上の道路とみなされます。
その際、道路の中心線から水平距離2mの線をその道路の境界線とみなしますが、片側が川や崖などになっている場合は、川や崖などの境界線から4mの箇所に道路境界線があるものとみなされます。その道路境界線から道路側の部分については、自身の所有地であっても建物や塀などを造ることはできません。
また、後退した部分(道路とみなされた部分)の土地は、建蔽率・容積率を算定する上での敷地面積には入りません。
道路幅員は、車や人が実際に通行している部分の端から端までの長さです。その際、側溝(U型・L型)はフタの有無に関係なく道路幅員に含まれます。
ただし、自治体(大阪市)によっては側溝を道路幅員に含めないと規定している場合もあり、自治体ごとに規定が異なりますので確認が必要です。
道路に隣接する水路などは、原則として道路幅員に含めません。ただし、暗渠(水路にふたがされている状態)の場合は道路幅員に含める場合がありますので、こちらもお住まいの自治体に確認を取ると良いでしょう。
接道義務とは、建築物の敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していないと建物を建てることはできないことをいいます。(建築基準法第43条)
2m以上接しないといけない規定は、道路から直径2mの球が敷地内に支障なく入ることが可能な状態をいいます。
建築予定地が接道しているか否かを見た目だけで判断してはいけません。外見上は道路に接していても、実際には建築予定地と道路との間に他人の名義の土地が存在する可能性があるからです。その場合は接道義務を果たしておらず建築不可となってしまいますので、必ず法務局に備えられている公図を点検し、建築予定地が直接道路に接していることを確認する必要があります。
接道義務は、都市計画区域および準都市計画区域内でのみ適用されます。都市計画区域外では適用されないので、道路に接していなくても建物を建てることができます。
道路調査は、建築予定地が接道義務を果たしているか否かを調査するものです。公図や現地確認において接道していることを確認できれば、その道路が建築基準法上の道路か否かを調査します。
建築基準法上の道路の是非は、市区町村の建築指導課に備えられている道路図面で確認できます。
対応は市区町村ごとに異なり、以下など様々です。
その際、道路の有無を判定する図面などの写しを必ず取得するようにしましょう。取得できない場合は返答してくれた職員の名前を記録するようにします。
また、市区町村によってはWEBサイトで確認できる場合もあります。
また、建築基準法上の道路の有無だけに限らず以下などがあればあわせて取得するようにしましょう。
都市計画道路の有無を確認するために、都市計画課で確認します。都市計画道路がある場合、現在の道路が大きく拡幅される可能性があります。その際、建築予定地に都市計画道路が被さっている可能性もありますので、必ず確認するようにしましょう。
都市計画課では、都市計画道路図(計画がある場合)などを取得するようにしましょう。
公道か私道かを確認するために、道路管理課で確認します。公道(国道・都道府県道・市区町村道)の場合であれば道路管理課で確認できます。
道路管理課では、以下などを取得するようにしましょう。
建物を建てる場合の2m以上の接道義務は現地調査で確認します。その際、建築予定地と道路との境界線がどこなのかを把握しなければなりません。
公道の場合、敷地境界線上に鋲やプレートが打ち込まれているため、道路調査において最も重要な調査項目となります。
私道は、企業や個人が所有する道路(土地)のことです。私道の管理は、所有する企業や個人の場合もあれば自治体が管理する場合もあります。
私道は企業や個人の所有地なので、道路としての利用を廃止することや道路の新規設置、私道の上に建物や工作物を造ることは自由で、私道を賃貸することや譲渡することも可能です。
ただ、私道でも建築基準法上の道路として認定される場合があります。私道が建築基準法上の道路である場合、道路幅員が4m未満であれば建築基準法42条第2項によりセットバック(道路後退)する必要があります。
建築予定地が私道に接している場合、建築基準法上の道路か否かを明確にする必要があります。建築基準法上の道路で無ければ、建物を建てることはできません。
また、建築基準法の道路か否かが未判定の場合もあります。明確にしたい場合は、市区町村の建築指導課に道路判定の申請を行い、建築審査会に審議を図って是非の判定をしてもらいます。
なお、仮に建築基準法上の道路として判定が下されても、その土地での建築が将来にわたり許可されるものではないため、建て替えの際はその都度建築審査会の審議が必要になります。
ただし、そのような性格の道路に接する土地は再建築不可となる可能性を有するため、金融機関から融資を受ける際に評価はかなり下がってしまう傾向にあります。
私道には固定資産税と都市計画税が課されますが、条件を充たせば私道部分の固定資産性・都市計画税を免除される場合があります。
その条件としては以下などです。
ただし、私道のある市区町村によって審査基準は異なり一様には言えませんので、各市区町村の固定資産税課に確認するようにしましょう。
建築基準法上の「道路」の概要や接道義務、接道義務が適用されない地域、道路の調べ方、私道の概要について解説しました。
建築予定地に建物を建てる場合、少なくとも道路に2m以上接していなければならず、また、接する道路が建築基準法上の道路でないと建物を建てることはできないということがご理解いただけたのではないでしょうか。
建物を建てる検討をする場合、建築予定地の接する道路に対して事前に入念な調査をしておくことが重要となります。