建築積算士とは?資格を取るメリットや仕事内容、試験概要を解説
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建築積算士とは?資格を取るメリットや仕事内容、試験概要を解説

2022年9月5日

建築積算士は建築分野において重要な役割を果たし、今後も建築需要の増加に伴い建築積算士に対する需要も高くなると考えられるため、大変魅力的な資格です。
今回は、建築積算士の概要や仕事内容、資格を取るメリット、年収、試験概要、勉強方法について解説します。これから建設業界に従事する方や、建設業界従事者でキャリアチェンジを検討されている方はぜひ最後まで読んでみてください。

 


 

建築積算士とは?

建築積算士とは、建築生産過程における工事費の算定並びにこれに付帯する業務に関し、高度な専門知識や技術を有する専門家を指します。
具体的には、設計図書や仕様書に基づいて、建築生産過程で必要となる建築材料の数量や人数(工数)から割り出した工事費を算出する業務を担います。

元々は国土交通省認定の資格でしたが、行政改革により民間資格となり、2001年から公益社団法人日本建築積算協会が認定する資格制度となりました。
建築積算士の下位資格として「建築積算士補」があり、建築積算士の上位資格として「建築コスト管理士」があります。建築コスト管理士は建築生産過程だけにとどまらず、企画・構想・廃棄まで建築物のライフサイクルを見越したコストマネジメントを行うことができる資格です。

 

建築積算士の仕事内容

建築積算士の仕事内容は、公共工事民間工事に分類されます。

公共工事

官公庁が発注する公共工事では税金が使われることもあり、公平性・公正性に重点が置かれて建築工事業者が選定されます。そのため、複数の建築工事業者による提示価格を競わせる「競争入札」により決定されます。
建築工事業者が公共工事を受注するためには、正確な積算に基づいて戦略的に提示価格を決定して入札に参加します。

 

民間工事

民間工事においても入札があります。建築積算士は、設計図書や仕様書に基づいて見積書の基となる工事費の算定を行います。
民間工事の入札は、公共工事の入札と比較して厳格な決まりはなく、発注者が自由に業者の選定を行うことが可能です。

 

建築積算士の資格を取るメリット

建築積算士の資格を取るメリットとしては、主に以下などが挙げられます。

  • 転職で有利になる
  • 官公庁への転職にも活用できる
  • 建築コスト管理士へのステップアップになる

 

転職で有利になる

建築積算業務は、建設業界においては必ず必要とされる業務になります。それだけに、建築積算士の資格を保有していると、建設会社や工務店、ハウスメーカーなどに転職する際に有利にはたらくといえます。当然、転職だけでなく、キャリアアップや年収アップにも有効的です。
建築士や建築施工管理技士の資格が無い方は、まず建築積算士の下位資格である「建築積算士補」を目指してみるのも良いかもしれません。

また、建設会社などが官公庁の建築工事、土木工事などを受注する際は必ず入札に参加する必要があります。その際、国土交通省の規定する入札条件において「一般競争参加資格」が必要であることが記載されているため、建築積算士の有資格者がいなければ入札に参加することもできません。
官公庁以外でも、国土交通省の外郭団体である都市再生機構においても同様の規定になっており、一般競争入札への参加資格は建築積算士の配置が条件となっています。
それゆえに、建築積算士の有資格者は大手・中小建設会社にとっても必要な人材となるため、建設業界で活躍したい方にとって資格取得は有効手段の一つといえるでしょう。

 

官公庁への転職にも活用できる

建築工事などを発注する際、ベースとなる工事金額を把握しておく必要があり、そのためには建築積算業務のできる人材が必須となります。このように建築積算士の資格所有者は重宝されるため、官公庁へ転職できる可能性も上がるといえるでしょう。
上記でも触れましたが、もともと建築積算士の資格は国土交通省の認定資格でした。そのため、国土交通省や都道府県の建築部や土木部、市区町村の建築部や土木部といった建築関連部署とは馴染みが深いため、官公庁への転職にも有効的に活用することができます。

 

建築コスト管理士へのステップアップになる

建築積算士の上位資格である「建築コスト管理士」は、建築生産過程だけにとどまらず、企画・構想・廃棄まで建築物のライフサイクルを見越したコストマネジメントを行うことができる資格であるため、建築積算のスペシャリストを目指す方にとって、ぜひ取得をオススメする資格のひとつです。
そこを目指しつつ、その前段階としてまずは建築積算士の資格取得に挑戦するのが良いでしょう。

建築積算資格 建設業界における立場 難易度
建築コスト管理士 建築プロジェクトのコストに関する専門家
建築積算士 工事費算定の専門家
建築積算士補 工事費算定の専門家予備軍

 

建築積算士の年収

建築積算士の年収は、企業規模・勤続年数・実務経験年数・年齢・実績などにより大きく異なりますが、建築積算士の有資格者で実務経験者が転職する場合の年収は約400万円~900万円になります。
また、建築積算士の有資格者であっても新卒者や未経験者の場合の年収は約200万円~300万円となります。
ただし、有資格者の場合は会社側にとっても入札資格などのメリットがありますので、企業より資格手当が支給される場合があります。

 

建築積算士の試験概要

以下では、2022年度の「建築積算士」試験の試験内容や試験日程、受検資格、試験地、受験料、合格率、難易度について解説します。

試験内容

建築積算士として求められる知識は、下表の通りです。

項目 内容
生産プロセス 建設産業の特徴と変遷及び現状、コストマネジメントの考え方、建築生産プロセスとマネジメント
工事発注スキーム 入札の種類、発注方式、契約方式、数量公開、発注単位(パッケージ)
設計図書構成 設計図書構成と種類、優先順位
工事費構成 直接工事費と共通費の構成、主要建物用途の種目別工事費構成比率
積算業務内容 積算業務の流れ、積算実務(仮設、土工、躯体、仕上、設備、屋外施設、改修)、概算手法の概要、値入業務
数量積算基準 基準及び同解説の理解
標準内訳書式 基準及び同解説の理解
主要な市場価格 市場価格、コスト情報の入手方法
データ分析と積算チェック データ整理、歩掛、分析方法、積算チェック
施工技術概要 建築施工プロセス、標準的な施工法、特殊工法(省力化、工業化、工期短縮等)概要
LCC・VE概要 LCC(ライフサイクルコスト)の概要、VE(バリューエンジニアリング)の概要
環境配慮概要 環境配慮とコスト概要

※参考元:「2022年度「建築積算士」試験案内」公益社団法人 日本建築積算協会

 

● 一次試験

一次試験の試験方法と出題範囲は下表の通りです。

項目 内容
試験時間 3時間
出題範囲 建築積算士ガイドブック全章(平成29年版建築数量積算基準・建築工事内訳書標準方式の主要な部分はガイドブックに記載)
問題数 50問
問題形式 四肢択一

※参考元:「2022年度「建築積算士」試験案内」公益社団法人 日本建築積算協会

 

● 二次試験

二次試験は、短文記述試験実技試験に分かれます。それぞれの試験方法と出題範囲は下表の通りです。

短文記述試験 実技試験
試験時間 1時間 4時間30分
出題範囲 建築積算士ガイドブックのうち
第1章~第4章、第9章~第15章
建築積算士ガイドブックのうち
第5章~第8章、巻末の基準類(平成29年版建築数量積算基準・内訳書標準書式は、ガイドブックに記載)
問題数 2問 躯体(コンクリート、型枠、鉄筋)、鉄骨、仕上、内訳明細作成・工事費算出
問題形式 問題に対する解答を短文(200字以内)で記述 図面に基づき、数量を計測・計算
内訳明細の作成

※参考元:「2022年度「建築積算士」試験案内」公益社団法人 日本建築積算協会

 

試験日程

2022年度の試験日程は下表の通りです。

申込期間 試験日時 合格発表
一次試験 2022年6月1日(水)

2022年8月31日(水)
2022年10月23日(日)
12:50~15:50(3時間)
2022年12月1日(木)10時頃
協会ホームページで公開
二次試験 2022年10月1日(土)

2022年12月7日(水)
2023年1月22日(日)10:00~17:00
実技試験:4時間30分
短文記述試験:1時間
2023年3月1日(水)10時頃
協会ホームページで公開

※参考元:「2022年度「建築積算士」試験案内」公益社団法人 日本建築積算協会

 

受験資格

一次試験、二次試験の受験資格は下表の通りです。

受験資格
一次試験 2022年4月2日現在、満17歳以上(2005年4月1日以前に生まれた方)であれば、学生、社会人の方すべてが受験可能
二次試験 今年度一次試験に合格した方、及び一次試験を免除された方
※一次試験免除対象者:下記のいずれかに該当する方は、一次試験が免除
①公益社団法人日本建築積算協会が認定する建築コスト管理士、建築積算士補
(受験申込時に資格登録番号必要)
②建築士法による一級建築士、二級建築士及び木造建築士(免許証等の写し必要)
③建設業法による一級及び二級建築施工管理技士(合格証明書等の写し)
④公益社団法人日本建築積算協会が実施する積算学校卒業生
(卒業した積算学校事務局発行の証明書又は卒業証必要)
⑤過去の一次試験合格者(二次試験受験票(正)又はその写し必要)

※参考元:「2022年度「建築積算士」試験案内」公益社団法人 日本建築積算協会

 

試験地

一次試験、二次試験の試験地は下表の通りです。

試験地
一次試験 札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、広島、福岡、鹿児島、沖縄
(全国10都市10会場)
二次試験 札幌、仙台、東京、名古屋、金沢、大阪、岡山、広島、福岡、鹿児島、沖縄
(全国11都市11会場)

※参考元:「2022年度「建築積算士」試験案内」公益社団法人 日本建築積算協会

 

受験料

一次試験、二次試験の受験手数料は下表の通りです。

受験手数料
一次試験 27,500円/税込
(学生会員は13,750円/税込)
二次試験 27,500円/税込※(建築積算士補、学生会員は13,750円/税込)
※今年度の一次試験合格者は不要

※参考元:「2022年度「建築積算士」試験案内」公益社団法人 日本建築積算協会

 

合格率

一次試験と二次試験の合格率の推移を解説します。

【一次試験】

直近5年間の一次試験合格率の推移は下表の通りです。

試験実施年度 受験者数 合格者数 合格率
2017年度 371人 227人 61.2%
2018年度 313人 212人 67.7%
2019年度 313人 177人 56.5%
2020年度 323人 171人 52.9%
2021年度 361人 244人 67.6%

 
直近5年間の一次試験合格率は、60%前後で推移しています。
合格基準は満点中おおよそ60%以上の正解率と想定されますが、明確にはされていません。

 

【二次試験】

直近3年間の二次試験合格率の推移は下表の通りです。

試験実施年度 受験者数 合格者数 合格率
2019年度 644人 446人 69.3%
2020年度 523人 330人 63.1%
2021年度 759人 491人 64.7%

 
直近3年間の二次試験合格率は、65%前後で推移しています。
合格基準は満点中おおよそ60%以上の正解率と想定されますが、明確にはされていません。

 

難易度

合格率が平均60%以上を推移している状況を見ても、積算の実務経験者にとっては易しい試験であるといえるでしょう。

 

建築積算士の勉強方法

建築積算士の勉強方法としては、日本建築積算協会が主催する研修会・講習会への参加や独学など、様々な方法があります。

過去問を解く

過去問は「公益社団法人日本建築積算協会」のWebサイトにも掲載されており、2011年度~2021年度の学科試験と短文記述試験の問題と解説が掲載されています。
また、「建築積算士ガイドブック」の何ページからの出題であるかも記載されていますので、問題を解きながら教本と照らし合わせて勉強を進めると良いでしょう。
最低でも3回は過去問を繰り返し解き、完全に解答できるようにしておけば十分に合格を狙えるでしょう。

 

ガイドブックを読む

上記の一次試験・二次試験の出題範囲にも明記しましたが、「公益社団法人日本建築積算協会」発行の「建築積算士ガイドブック」の中から大半が出題されますので、この教本をマスターすれば十分に合格を狙えるでしょう。

 

独学での勉強時間はどれくらい?

建築積算の実務経験者であれば、勉強期間は1~2ヶ月が目安と考えられます。
建築積算の実務経験はなくても建築関係の業務に携わっている方であれば、勉強期間は3ヶ月前後が目安となります。この方の場合だと、1日2時間ほど勉強時間を確保できたとして、総勉強時間は約200時間となります。
また、全く建築に関係してこなかった方であれば、勉強期間を少なくとも6ヶ月~1年間は見ておいた方が賢明です。専門用語の理解から始めなければなりませんので、建築の基礎を理解するのに3ヶ月~6ヶ月は要するでしょう。

 

まとめ

建築積算士の概要や仕事内容、資格を取るメリット、年収、試験概要、勉強方法について解説しました。
建築工事は年々増加傾向にあります。建築工事があり続ける限り、建築積算士の需要も高い状態で維持し続けるといえます。
非常に将来性の高い業務ですので、建設業界でキャリアアップや収入アップを検討されている方は、ぜひ建築積算士の資格取得に挑戦されることをオススメします。

 


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