工事監理と工事管理の違いを解説!工事にはどちらも必要?
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工事監理と工事管理の違いを解説!工事にはどちらも必要?

2022年9月2日

「工事監理」と「工事管理」は、読み方は同じのため混同して使われがちですが、業務内容に違いがあります。
そこで今回は、「工事監理」と「工事管理」の違いやそれぞれの必要性について解説します。
建築主側での立場と現場側での立場の違いであることがわかりますので、建設業関係者の方やこれから従事する方はぜひ最後まで読んでみてください。

 


 

工事監理と工事管理の違い

工事監理と工事管理の違いを簡単にまとめると、以下の通りです。

  • 工事監理:建築士が建築主側の立場となり、建設施工会社の工事を点検・確認・是正する業務
  • 工事管理:建設施工会社(ゼネコン・工務店)における現場業務

 
また、工事監理と工事管理の違いを以下の観点から解説していきます。

  • 目的の違い
  • 業務内容の違い
  • 責任の違い
  • 求められる資格の違い
  • 現場へ行く頻度の違い

 

目的の違い

「工事監理」の目的は、建物の設計図書や仕様書通りに施工されているか、進捗度合などの点検・確認です。正しく行われていなければ、「工事管理者」に対して設計図書や仕様書通りの工事を進めるように注意を促します。

また、「工事管理」の目的は、建設現場の工程管理・品質管理・原価管理・安全管理などを行いながら設計図や仕様書通りかつ工事期限までに建物を完成させ、建築主に引き渡すことです。

 

業務内容の違い

次に、「工事監理」と「工事管理」の業務内容の違いを解説します。

【工事監理】

「工事監理」の業務内容は、設計図書・仕様書通りに建物が造られるための点検・確認・是正などになります。
設計図書や仕様書には建築工事に伴う建築材料や建築物の寸法、適用する仕様などが記載されており、その数量や寸法、仕様通りに工事が進捗しているか否かを建設現場において工事管理者と打合せしながら照合し、確認します。
下表に主な工事項目ごとの工事監理内容をまとめました。

工事項目 工事監理内容
1 着工 施工図・施工計画(工程表など)の点検・確認など
工事管理者(現場監督など)とのコミュニケーションを図り、工事情報収集
2 地業工事 土質試験データなどの書類点検・確認、掘削範囲・深さなどを立会確認
杭基礎の場合、杭の口径・長さなどの確認、地盤への到達有無の点検・確認
3 基礎工事 鉄筋などの仕様確認、鉄筋の配筋位置・数量点検・確認など
コンクリート(セメント・骨材・水・混和材)仕様・品質などの立会確認
コンクリート打設時の立会確認、施工記録などの書類確認
4 構造躯体工事 鉄筋・鉄骨材・木材などの仕様確認、鉄筋の配筋位置・数量などの立会確認
コンクリート(セメント・骨材・水・混和材)仕様・品質などの立会確認
コンクリート打設時の立会確認・施工記録などの書類確認
ボルト孔の口径・位置、溶接個所など目視・計測による立会確認
接合箇所・つなぎ目などの目視・計測による立会確認、施工記録などの書類確認
5 防水工事 アスファルト防水工事・塗装防水・シーリングなどの目視による立会確認
自主検査記録・材料搬入報告書・工事写真などの書類確認
6 仕上げ工事 左官工事・建具工事・塗装工事などの目視による立会確認
外装工事(タイル工事など)・内装工事などの目視による立会確認
自主検査記録・材料搬入報告書・工事写真などの書類確認
7 設備工事 電力設備工事などの規格・材質・寸法・容量の目視・計測による立会確認
情報通信設備工事などの規格・種類の目視・計測による立会確認
法令に適合している旨の資料などによる書類確認
8 竣工 建築確認の完了検査での立会、消防の完了検査での立会
工事監理報告書を建築主へ提出・報告
建築主が行政機関(指定確認検査機関)へ提出する完了検査申請書をサポート

※参考元:「工事監理ガイドラインの策定について」国土交通省

また、工事監理者は建設会社からの工事変更要望などに対して、建築主との調整や工期の調整なども行わなければなりません。
建築主・建設会社・工事監理者が参加する定例会議などで、工事の問題点や工期調整などを解決しながら工事の円滑化を図ります。

 

【工事管理】

「工事管理」の業務内容は、「4大管理」といわれる工程管理や品質管理、安全管理、原価管理などになります。

種類 各種管理内容
工程管理 工程管理は、建設工事の決められた工期を守るために、スケジュール管理を行うことです。
建設工事には、「工期」と呼ばれる建築物完成期限が設けられており、発注者と受注社との間で工期内に建築物を完成させる契約が交わされます。各工事の工期を調整しながら、全体の工期を守り、工事を完成させる必要があります。
原価管理 原価管理は、施工計画などに基づき算出した「実行予算」と、建設現場での実際の工事において発生する「原価」とを比較し、利益を計上できるように管理を行うことです。
実行予算よりも原価が増える傾向にある場合、利益を計上することができません。対策として、工事管理者は、施工計画の見直しや下請工事業者の変更などを行い、実行予算と原価を調整しながら、利益計上できるように管理を行います。
品質管理 品質管理は、建設対象物が設計図書や仕様書通りに造られているかの管理を行うことです。具体的には以下などを点検・確認します。
・設計図書に記載されている寸法通りに建築物が造られているか
・仕様書に記載されている強度や機能・材質通りに建築物が造られているか

点検・確認する手段として、評価対象ごとに決められた試験方法や点検方法などで確認を行い、品質を確保します。
安全管理 安全管理は、建設現場において安全な環境で工事作業を行えるように整備し、事故を起こさないように管理することです。
その対策として、以下などを進めます。
・KYK:危険予知活動
・5S運動:整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)
・ヒヤリハット運動

 

責任の違い

「工事監理」の責任は、建築士法第2条第8項にもある通り、建設工事を設計図書や仕様書と照合し、建設工事が設計図書や仕様書通りに行われているか否かを確認し、建築主に報告することです。
一方で「工事管理」の責任は、設計図書や仕様書通りに建設物を建てることです。

 

求められる資格の違い

「工事監理者」は建築基準法第5条により、一級建築士や二級建築士、木造建築士の有資格者であることが規定されています。
一方、「工事管理者」は原則として必要な資格はありません。ただし、施工管理技士などの工事管理能力を示す資格は存在します。

以下では、各建築士が工事監理できる建築物の条件を解説します。

● 一級建築士でなければできない工事監理

建築士法第3条第1項に規定する、一級建築士でなければできない工事監理の建築物を下表にまとめました。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
建築用途 学校、病院、劇場、映画館、公会堂、百貨店、集会場(オーデイトリアムを有しないものを除く) 延床面積:500㎡超
建築構造 木造 高さ:13m超
軒の高さ:9m超
鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、煉瓦造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造 延床面積:300㎡超
高さ:13m超
軒の高さ:9m超
上記以外の建築物 延床面積:1,000㎡超かつ
階数:2階以上

 

● 一級建築士または二級建築士でなければできない工事監理

建築士法第3条の2第1項に規定する、一級建築士または二級建築士でなければできない工事監理の建築物を下表にまとめました。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
建築構造 木造 延床面積:300㎡超
階数:3階以上
鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、煉瓦造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造 延床面積:30㎡超
上記以外の建築物 延床面積:100㎡超
階数:3階以上

 

● 一級建築士、二級建築士または木造建築士でなければできない工事監理

建築士法第3条の3第1項に規定する、一級建築士、二級建築士または木造建築士でなければできない工事監理の建築物を下表にまとめました。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
建築構造 木造 延床面積:100㎡超
階数:2階以下
鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、煉瓦造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造 延床面積:30㎡以下
階数:2階以下

 

● 建築士でなくてもできる工事監理

建築士の資格を有していなくてもできる工事監理の建築物を下表にまとめました。

建築物の用途・構造 建築物の延床面積・高さ
建築構造 木造 延床面積:100㎡以下
階数:2階以上
鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、煉瓦造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造 延床面積:30㎡以下
階数:2階以下

 

現場へ行く頻度の違い

「工事監理者」は建設現場での常駐はなく、必要なタイミングにて工事施工箇所の検査を行い、問題点の有無を点検・確認します。例えば、鉄筋の配筋検査やコンクリート打設時などの要所となる工事に立会い、施工会社からのヒアリングや材料品質証明書・検査結果報告書などの書類確認、写真確認などを行います。
「工事監理者」の判断により現場での立会確認などの頻度を決めますが、工事の難易度や建設会社の工事能力などにより左右されることもあります。
一方、「工事管理者」は建設現場に常駐し、専門工事会社や職人などの作業員に対して、指示を出しながら工事の進捗度合を管理します。

 

まとめ

「工事監理」と「工事管理」の違いやそれぞれの必要性について解説しました。
上記でも触れましたが、「工事監理」は建築士が建築主側の立場となって建設施工会社の工事を点検・確認し是正させる業務を担い、「工事管理」は建設施工会社(ゼネコン・工務店)における現場業務を担うため、利害関係が相反する関係性があります。
しただって、建築主の利益を確保する意味でも、「工事監理者」と「工事管理者」はどちらも必要だといえるでしょう。

 


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