RC造のメリット・デメリットを解説!他の建物構造とは何が違う?
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RC造のメリット・デメリットを解説!他の建物構造とは何が違う?

2022年7月7日

建築構造には、RC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造、S造、木造などがあります。その中でもRC造は中層階から高層階のマンションや事務所などによく利用される建築構造で、耐久性や安全性に優れているのが特徴です。
そこで今回は、RC造の概要やメリット・デメリット、他の建築構造との違いについて解説します。最後にRC造に関するよくある質問も載せていますので、ぜひご覧ください。

 


 

RC造とは?

RC造とは鉄筋コンクリート造のことで、RCはReinforced Concreteの略です。
鉄筋コンクリート造は、主要構造部(柱、梁、床、壁、屋根、階段)や基礎を鉄筋とコンクリートにより造られた構造で、主要構造部や基礎を形成する部分において鉄筋を組立てて形状を定め、その周りを型枠材で囲みコンクリートを流し込んで養生し組立てます。

鉄筋

鉄筋コンクリートに使用する鉄筋(棒鋼)はJIS G 3112「鉄筋コンクリート用棒鋼」に規定されており、鉄筋の中でも異形鉄筋といわれる棒鋼が利用されます。異形鉄筋は、棒鋼の表面に「リブ」と「ふし」といわれる突起物があり、コンクリートとの付着性を良くしています。
メリットとしては、以下の通りです。

  • 鉄筋の定着長さや重ね合わせ長さを短くできる
  • 引張鉄筋周辺のコンクリートに生じるひびわれ幅を小さくできる

 

コンクリート

コンクリートは、セメント、水、細骨材(砂)、粗骨材(砂利)、混和材料により構成されます。左記の材料がコンクリートの中に占める割合を体積で比較すると、多く入っている順に粗骨材(砂利)、細骨材(砂)、水、セメント、混和材量となります。

 

RC造の特徴

RC造の特徴は、2種類の建材である鉄筋とコンクリートの組合せで建築構造物や土木構造物に必要な強度を出している点です。鉄筋とコンクリートの性質を下表にまとめました。

建材 線膨張係数(1/℃) 性質
鉄筋 1.0×10-5
  • 引張力に強く、圧縮力に弱い
  • 熱に弱く、錆びやすい
コンクリート 1.0×10-5
  • 引張力に弱く、圧縮力に強い
  • 熱に強く、錆びない

 
RCは、鉄筋とコンクリートのそれぞれのメリット・デメリットを活かし補い合う建材です。
【例】

  • 圧縮力に弱い鉄筋を、圧縮力に強いコンクリートが補う
  • 引張力に弱いコンクリートを、引張力に強い鉄筋が補う
  • 熱に弱い鉄筋を、熱に強いコンクリートが補う

 
鉄筋とコンクリートが一緒に使用できる最大の理由は、鉄筋とコンクリートの線膨張係数*1が同じであることです。例えば、火災などにより鉄筋コンクリートの温度が上昇し、鉄筋とコンクリートがそれぞれ膨張する際、同じ割合で膨張します。したがって、膨張によるずれが生じないため強度が損なわれずに済みます。

*1 線膨張係数:温度変化1℃当たりの変形量と変形前の長さの割合

 

RC造のメリット

RC造のメリットとして、耐火性・防音性・耐震性が高いことが挙げられます。

耐火性が高い

鉄筋コンクリートを構成する鉄筋とコンクリート自体が燃えることはありません。しかし、鉄筋に関しては火に直接さらされると著しく強度が落ちるため、鉄筋を覆う耐火性能の高いコンクリートが鉄筋を火から守ります。したがって、RC造は全体的に耐火性能の高い建材となります。
火災が発生した場合、建築構造物などの外壁温度は1,000℃に達するといわれています。しかし、温度が上昇し高温状態が続いたとしても、RC造の強度が低下することはありません。また、建材自体は燃えないため、有毒ガスも発生しません。
以上のことから、RC造は「建築基準法」第2条7号において「耐火構造」*2となります。

*2 耐火構造:主要構造部(柱、梁、床、壁、屋根、階段)が一定の耐火性能(通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊や延焼を防止するために必要な性能)を備えた構造。

➤「耐火構造」に関する詳細はこちら

 

「建築基準法施行令」第107条に、耐火構造に対して構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じさせない最低限度の時間が規定されています。

建築物の部分 最上階及び最上階から数えた階数が2以上4以内の階 最上階から数えた階数が5以上14以内の階 最上階から数えた階数が15以上の階
間仕切壁
(耐力壁に限る)
1時間 2時間 2時間
外壁
(耐力壁に限る)
1時間 2時間 2時間
1時間 2時間 3時間
1時間 2時間 2時間
1時間 2時間 3時間
屋根 30分間
階段 30分間

 

防音性が高い

RC造は、隙間ができないようにコンクリートを流し込んで造られるため、密度が高く防音性能が高くなることもメリットの一つです。
防音は遮音(音を遮る)、吸音(音を吸収する)に分類されますが、コンクリートは密度が高いゆえに遮音性能に優れています。
また、音は周波数により人の感じ方が異なり、高い音はすぐに消滅し、低い音は残響感があり不快感を抱くという傾向があります。そういった面でコンクリートは、高い音・低い音の両方に有効的です。

音が伝搬する仕組みは以下の2つがあり、コンクリートであっても完全に音を遮ることはできません。

  • 空気伝搬音:空気の振動による伝搬
  • 個体伝搬音:柱や壁、床スラブの振動による伝搬(例:ドアの開閉音や足音)

 

耐震性が高い

地震が発生すると、縦揺れ・横揺れなどの様々な振動が建築物の主要構造部に負担をかけるため、瞬時に柱や梁などに引張力や圧縮力が繰り返し作用します。
しかし、RC造は鉄筋による引張力に強い特性とコンクリートによる圧縮力に強い特性を持ちますので、耐震性が高くなります。

 

RC造のデメリット

RC造のデメリットとして、夏は暑く冬は寒くなりやすい点や結露・カビが発生しやすい点、コストが高い点が挙げられます。

夏は暑く冬は寒くなりやすい

コンクリートは温まりにくく冷めにくいという特性があるため、夏は熱がこもりやすくなり、日中に蓄積された太陽光の熱が夜間になっても冷めず室温が低下しない傾向があります。逆に、冬は建物自体の温度が低く保たれることにより、寒く感じることが多くなります。
以上により、夏は冷房が効きにくく、冬は暖房が効きにくいという現象が生じやすくなる点はデメリットと言えるでしょう。

 

結露やカビが発生しやすい

コンクリートは気密性が高く湿気が抜けにくいという特性があるため、結露やカビが発生しやすい傾向にあります。

 

コストが高い

RC造はコンクリートを流し込んだ後、一定の強度が出るまで養生をする必要があり、工事期間が長くなります。その分、人件費や設備・備品費などの様々な経費が高くなり、結果として建築コストが高くなります。

 

他の建物構造との違い

建築構造にはRC造以外にもSRC造やS造、木造がありますので、RC造とそれらの建築構造との違いを解説します。

SRC造との違い

SRC造は鉄骨鉄筋コンクリート造のことで、SRCはSteel Reinforced Concreteの略です。
SRC造は、主要構造部に鉄骨と鉄筋コンクリートを使用して造られます。柱・梁においては鉄骨の周りに鉄筋を組み、その周りを型枠で囲みコンクリートを流し込んで造られた構造で、超高層建築物などによく利用されます。
ただし、全ての階に鉄筋コンクリートを使用すると建物全体の重量が大きくなりすぎてしまい、上層階には鉄筋コンクリートを使用しないケースもあります。
RC造はSRC造と比較して経済性には優れますが、耐震性には劣るでしょう。

 

S造との違い

S造は鉄骨造のことで、SはSteelの略です。
RC造はS造と比較して耐火性・防音性・耐震性・気密性などには優れますが、経済性では劣ります。

 

木造との違い

木造は主要構造部に木材を使用して造られた構造です。日本伝統の建築構造形式であり、柱・梁の太さによっては法隆寺などの仏閣のように1,200年以上建ち続けている建築物もあります。
RC造は、木造と比較して耐火性・防音性・耐震性・気密性などに優れますが、湿度調整機能や経済性は劣るでしょう。

建築構造の違いによる性能を簡易にまとめると下表の通りです。

建築構造 耐火性 防音性 耐震性 経済性
RC造
SRC造 ×
S造
木造 × × ×

 

RC造に関してよくある質問

RC造に関するよくある質問として、「うるさいのでは?」「何年住める?」などがあります。それらの質問に対して解説していきます。

RC造はうるさい?

RC造は、他構造と比較すると防音性は高いです。しかし、マンションの住民による感覚はそれぞれ異なるため、同じ大きさの音に対して「静か」と感じる人もいれば、「うるさい」と感じる人もいるでしょう。
また、同じRC造のマンションでも、床スラブの厚さが150mmの場合と120mmの場合とでは音の伝搬の度合いは異なり、厚い方が小さく聞こえます。

上階の床で生じる音が下階でどの程度に聞こえるのかの基準として、L値という指標があります。
L値は音の伝搬のしにくさを表示し、L値の数字が小さいほど遮音性能が良くなります。
下表は、日本複合・防音床材工業会のWebサイトに掲載されている「実建物における空間性能と生活実感との対応例」に建築構造を加味したものです。

遮音等級 集合住宅としての等級 建築構造 生活実感(音の聞こえ方)
軽量床衝撃 重量床衝撃
L-40 特級 特級 上階で物音がかすかにする程度
L-45 1級 上階の生活が多少意識される状態
L-50 2級 1級 RC造(スラブ厚:150mm) 上階の生活状況が意識される
歩行などがわかる
L-55 2級 RC造(スラブ厚:120mm) 上階の生活状況がある程度わかる
スリッパの歩行音が聞こえる
L-60 3級 3級 重量鉄骨造 上階住戸の生活行為がわかる
L-65 級外 軽量鉄骨造 上階住戸の生活行為がよくわかる
L-70 素足でも歩行音が聞こえる
L-75 木造 人の位置がわかる、大変うるさい
L-80 人の位置がわかる、大変うるさい

参照元:日本複合・防音床材工業会:フローリング・ナビ

 

RC造マンションは何年住める?

建物寿命の一つの目安として、法定耐用年数を用いる場合があります。しかし、法定耐用年数は税務上の減価償却の計算に利用されるものであり、建物寿命とは関係ありません。
ちなみに、RC造の法定耐用年数は1998年の改正により47年と規定されています。当時と比較すると現在は同じRC造でも建材や施工技術の発展により、建物寿命は延びています。
ただし、定期的に的確なメンテナンスを施すことが条件となり、維持管理の行き届いている建物であれば、法定耐用年数よりも格段に長い住生活を送ることが可能です。

 

まとめ

以上、RC造の概要やメリット・デメリット、他の建築構造との違いについて解説しました。
RC造は、耐火性・防音性・耐震性・気密性・耐風性・耐水性が高いという優れたメリットを生み出します。一方で、室温管理が困難、結露・カビが発生しやすい、価格が高いというデメリットもありますので、建物の建築・購入・賃借などを検討する場合はRC造の特徴やメリット・デメリットにも勘案しながら選択されることをオススメします。

 


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