測量士補とは?資格を取得するメリットや年収、試験の難易度を解説
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測量士補とは?資格を取得するメリットや年収、試験の難易度を解説

2022年7月6日

測量士補試験は、毎年受験者数が1万人を超える人気資格です。測量士補を起点として、測量士や土地家屋調査士の取得が容易になることも人気要因の一つです。
そこで本記事では、測量士補の概要や資格取得のメリット、年収、測量士との違い、試験概要、勉強方法について解説します。建設投資額の増加が見込まれる建設業界で全ての工事になくてはならない測量業務は需要の拡大が見込まれますので、測量士を目指す方や測量士補の資格取得を検討中の方は必見です。

 


 

測量とは?

測量業務は、具体的には測量器具(トランシット・レベル・トータルステーションなど)を使用して距離や角度を測定し、ある土地の形状や面積、距離、高低差などを明確にし、測量図として図示する業務です。
測量は土木・建築工事の基礎となり、大規模構造物から住宅に至るまで全て測量から始まるため、正確性が求められ、社会的責任が伴います。

 

測量士補とは?

測量士は、測量に関する計画を作成および実施する者を指し、測量士補は、測量士の作成した計画に従い測量に従事する者を指します。

測量士補の受験資格

測量士補の資格を受験するには、下記のいずれかに該当する必要があります。

  1. 大学において測量に関する科目を修め、当該大学を卒業した者
  2. 短期大学などに測量に関する科目を修め、当該短期大学などを卒業した者
  3. 測量に関する専門の養成施設において1年以上の測量士補となるのに必要な専門の知識及び技能を習得した者
  4. 国土地理院の長が行う測量士補試験に合格した者

※参照元:「令和4年度測量士・測量士補試験について(受験案内)」国土交通省

 

測量士補の免許登録

測量士補試験に合格して資格を取得した後、国土地理院名簿に登録手続きを取ることで、測量士補に任命されます。資格取得だけでは測量士補として認定されませんので、注意が必要です。
資格取得者は国土地理院のWebサイトから登録申請書をダウンロードし、国土地理院総務課試験登録係に提出すると測量士補の免許が発行されます。

 

測量士補の資格を取得するメリット

測量士補の資格を取得するメリットとしては、以下などが挙げられます。

  • 測量士へのステップアップになる
  • 土地家屋調査士へのステップアップになる
  • 将来性が安定している

測量士へのステップアップになる

測量士補は、測量士を目指す上で必要な資格になります。また、測量士補からさらなるキャリアアップ、スキルアップ、年収アップを図る上でも測量士の資格取得は必須と言えるでしょう。

測量士補から測量士へステップアップするには、以下の条件に当てはまっている必要があります。

  • 文部科学大臣の認定した大学、短期大学、又は高等専門学校において、測量に関する科目を修め、当該大学等を卒業し、測量に関し実務経験(大学は1年以上、短大・高等専門学校は3年以上)を有する方
  • 国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設において1年以上測量士補となるのに必要な専門の知識及び技能を修得し、測量に関して2年以上の実務経験を有する方
  • 測量士補で、国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設において、高度の専門の知識及び技能を修得した方
  • 国土地理院が行う測量士試験に合格した方

 

土地家屋調査士へのステップアップになる

土地家屋調査士は、不動産の表示登記を独占的に行うことが可能な資格です。それ以外の主な業務内容は、土地の境界に関する手続き(境界確定・道路明示など)や測量などです。
土地家屋調査士の資格保持者はほぼ測量士補の資格を有しているため、測量士補は土地家屋調査士の登竜門的な資格であり、土地家屋調査士へのステップアップの起点ともなります。
また、測量士補試験は毎年5月に行われますが、土地家屋調査士試験は毎年10月に行われるため、同年度にダブル合格しやすいという特徴もあります。

 

将来性が安定している

土木・建築工事を行う際、事前に土木構造物や建築構造物の設計図書(設計図・仕様書など)を作成する必要があります。また、設計図書を作成するには計画地の形状・距離・面積・高低差などが記された測量図が必要となるため、そこで測量士・測量士補の出番となります。
建設投資額は年々増加しており、2010年:41.9兆円から2019年:65.4兆円と順調に推移しています。
なお、2020年はコロナ禍の影響により63.2兆円と減少しました。

※出典:「2020建設業ハンドブック」一般社団法人日本建設業連合会

 

  • リニア中央新幹線・地方新幹線(北陸・北海道)
  • 大阪国策博覧会
  • 大阪・長崎IR事業
  • 主要高速道路の維持・管理
  • 災害復旧(地震・洪水・高潮・津波対策)

 
上記のなどの大型プロジェクトを控えている現在、建設投資額の増加が見込まれます。そのため、測量業務も増加することが見込まれ、測量士・測量士補の業務も安定的に供給されることが想定できます。

 

測量士補の年収

国内での測量士補の平均給与は、年収約370万円です。
平均給与が高い地域は以下の通りです。

  • 東京都豊島区:年収約402万円
  • 東京都杉並区:年収約390万円
  • 宮城県仙台市青葉区:年収約369万円
  • 北海道札幌市豊平区:年収約357万円
  • 愛知県名古屋市名東区:年収約342万円

 

測量士と測量士補の違い

測量士と測量士補の違いについて、業務範囲・合格難易度・企業待遇の観点から解説していきます。

業務の範囲

上記でも解説した通り、測量士は測量に関する計画を作成および実施する者で、測量士補は測量士の作成した計画に従い測量に従事する者です。
測量士補は、測量士が作成した測量計画に基づき業務を進めていきます。土木・建築工事の基礎データとなる土地形状・距離・面積・高低差などを測量器具を用いて測定し、測量図や報告書としてまとめます。

 

合格難易度

測量士・測量士補試験の合格基準を下表にまとめました。

測量士試験 測量士補試験
試験時間帯 午前
(10:00~12:30)
午後
(13:30~16:00)
午後
(13:30~16:30)
試験形式配点 択一式計28問
1問25点:700点満点
記述式:700点満点
必須問題1題:300点
選択問題2題:400点
(選択問題4題中2題を選択)
択一式計28問
1問25点:700点満点
合格基準
  • 午前の択一式の点数:400点以上(16問以上正解)
  • 午前(択一式)の点数と午後(記述式)の点数の合計が910点以上
450点以上(18問以上正解)

 
測量士試験は択一式試験に加えて記述式試験があるため、その分測量士補試験と比較すると難易度は上がります。

 

次に、測量士・測量士補試験の過去10年間における合格率の推移を下表にまとめました。

試験年度 測量士試験 測量士補試験
平成24年度(2012年) 11.8% 40.7%
平成25年度(2013年) 5.2% 21.2%
平成26年度(2014年) 12.1% 39.7%
平成27年度(2015年) 11.5% 28.0%
平成28年度(2016年) 10.4% 35.9%
平成29年度(2017年) 11.7% 47.3%
平成30年度(2018年) 8.3% 33.6%
令和元年度(2019年) 14.8% 35.8%
令和2年度(2020年) 7.7% 30.3%
令和3年度(2021年) 17.9% 34.8%

 
過去10年間の合格率を比較すると、以下の通り明確に違いが表れています。

  • 測量士試験:5.2%~17.9%
  • 測量士補試験:21.2%~47.3%

 
測量士試験の場合は合格率が一桁の年度もあるため、難関試験と言えるでしょう。
一方、測量士補試験の場合は直近6年間の合格率が30%以上で推移しているため、しっかりと勉強をすれば取得できる試験と言えます。

 

企業からの待遇

測量士補の場合、測量士が作成した計画に基づき業務を進めていきますので、企業からの待遇は測量士と比較すると多少低くなる傾向にあります。
ただし、測量現場においては測量士と測量士補の業務内容に差はさほど無いため、待遇を同じにする企業もあります。

 

測量士補の試験概要

測量士補の受験資格・試験内容・試験日・受験地・合格基準・合格率について解説します。

受験資格

年齢・性別・学歴などに関係なく受験可能です。実務経験も必要ないため、受験のハードルは低いと言えるでしょう。

 

試験内容

試験形式・試験科目・試験問題作成方針は下記の通りです。

【試験形式】

試験形式は択一式で出題数は28問です。その内の10数問は計算問題が出題されます。

【試験科目】

試験科目は以下の通りです。

  • 測量に関する法規
  • 多角測量
  • 汎地球測位システム測量
  • 水準測量
  • 地形測量
  • 写真測量
  • 地図編集
  • 応用測量

 

試験日

試験日程は以下の通りです。
令和4年5月15日(日)13:30~16:30

 

受験地

全国の受験地は以下の通りです。
北海道、宮城県、秋田県、東京都、新潟県、富山県、愛知県、大阪府、島根県、広島県、香川県、福岡県
鹿児島県、沖縄県
※試験実施会場の詳細は「令和4年測量士・測量士補試験会場一覧」にてご確認ください。

 

合格基準

1問当たり25点で28問700点満点、450点以上の得点取得者(18問以上の正解者)が合格となります。

 

合格率

下表は、過去10年間の合格率の推移をまとめたものです。

試験年度 受験者数 合格者数 合格率
平成24年度(2012年) 10,551人 4,289人 40.7%
平成25年度(2013年) 10,596人 2,248人 21.2%
平成26年度(2014年) 11,118人 4,417人 39.7%
平成27年度(2015年) 11,608人 3,251人 28.0%
平成28年度(2016年) 13,278人 4,767人 35.9%
平成29年度(2017年) 14,042人 6,639人 47.3%
平成30年度(2018年) 13,569人 4,555人 33.6%
令和元年度(2019年) 13,764人 4,924人 35.8%
令和2年度(2020年) 10,361人 3,138人 30.3%
令和3年度(2021年) 12,905人 4,490人 34.8%

 
合格率は21.2%~47.3%となり、試験年によりバラつきがあります。平成28年度以降は合格率が30%以上で推移していますので、しっかり勉強すれば取得できる資格と言えるでしょう。

 

測量士補の勉強方法

測量士補の勉強方法は、主に以下の方法があります。

  • 過去問やテキストで独学
  • 通信講座を受講

また、資格取得に絞った必要最低限度の勉強時間は約30~60時間程必要です。

過去問やテキストで独学する

試験問題は過去問が比較的多く、きちんと勉強すれば合格できます。
計算問題で使用する公式や三角関数は、高校レベルの数学を理解していれば対応できるレベルです。たとえ数学が苦手な人でも出題のパターンがほぼ決まっているため、パターンを理解することにより問題は容易に解くことができるでしょう。
数学を勉強するというよりも、パターンをマスターするということを意識して勉強することで、大部分の問題をカバーできます。繰り返し問題を解き、問題形式などに慣れておくことが大切です。
計算問題以外の問題においても、繰り返し出題されている問題が多数あります。計算問題同様に、パターンをマスターすると合格に近づくことができるでしょう。

 

通信講座を受ける

通信講座を受講することで、最新の出題傾向に基づいた模擬問題・教科書や過去問の模範解説集などの教材を基に元試験官による添削やアドバイスを受けることができるため、十分に実力をつけることができます。
例えば、公益社団法人日本測量協会の通信添削講座ではeラーニングを採用しており、添削による指導以外にもオンライン上で学習が繰り返しできるシステムを採用しています。

また、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座の受講を修了した場合、本人が教育訓練施設に支払った金額の一部を支給する雇用保険の給付制度である「一般教育訓練の教育訓練給付金」が利用できます。
給付額は、支払った教育訓練経費の20%相当額ですが、上限は10万円です。
なお、雇用保険の被保険者であった期間が3年以上などの条件を満たす必要があります。

 

測量士補の資格取得に必要な勉強時間

過去問10年分をマスターすることが測量士補試験の合格を勝ち取る最も効率的な勉強方法であり、勉強時間の目安は30~60時間です。

測量士補試験は、出題数28問中18問正解の正答率64.3%で合格となります。
ある測量士補試験の養成機関が発行するブログ記事によると、以下の対策を取れば合格できるという調査分析もあります。

  • 過去4年分の出題問題をマスターすることにより、本試験問題の約67%をカバー
  • 過去7年分の出題問題をマスターすることにより、本試験問題の約80%をカバー

 
仮に過去問1年分のマスターに1時間かかった場合、10年分だと10時間かかります。また、大体最低3回は繰り返さないと完全にマスターはできませんので、30時間になるという計算です。
なお、過去問1年分のマスターに2時間かかる場合、総勉強時間は60時間になります。

上記を考慮すると総勉強時間は30~60時間となり、1日の勉強時間を2時間確保できる場合は試験当日の1か月前から試験勉強を始めると間に合う計算になります。

 

まとめ

測量士補の概要や資格取得のメリット、年収、測量士との違い、試験概要、勉強方法について解説しました。
大型建設プロジェクトが控えている現在、建設投資額は増加するものと想定されます。それに伴い、測量業務も増加することが見込まれ、測量士・測量士補の業務も安定的に供給されることが想定できるでしょう。
測量士補試験は平成28年度以降、合格率が30%以上で推移しています。30~60時間ほど勉強時間を確保し10年分の過去問をマスターすれば十分取得できる資格といえます。
自身のキャリアアップ・スキルアップ・年収アップのため、測量士補の資格取得を起点として測量士・土地家屋調査士の資格を取得することもオススメです。

 


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