2022年5月9日
「電気工事士」は、ビルや病院、工場、商店、住宅などの電気設備の安全を守るために電気工事を行う資格を有する者を指し、経済産業省が規定する国家資格です。
そこで今回は、第一種電気工事士をテーマに、第一種電気工事士の仕事内容や第二種電気工事士との違い、資格概要、現状と今後の需要について解説します。
第一種電気工事士の主な仕事内容として、建築電気工事や鉄道電気工事などがあります。
建築電気工事は建設現場での電気工事全般を指し、仕事範囲は広く仕事場所も様々です。
電気工事は安全な場所での配線作業のみでなく、高所での作業や地下に配管を通すための掘削、塗装などの仕事もこなす必要があります。
また、建設現場での電気工事の仕事ではスケジュールに余裕がない場合が多く、その影響でトラブルが発生することが多々あります。しかしそのような状況下でも、発注者や元請業者、下請け業者とのコミュニケーションをとりながら工期を守って遂行しなければなりません。
そのため、建築躯体工事や設備工事などの他業種との連携を図りながら工事を進めることが、建築電気工事では重要となります。
鉄道電気工事では、発電所から送電されてきた電気を電車用に変圧する変電設備のメンテナンスや管理などを行い、鉄道が安全・正確に運行できるように作業を行います。
また、駅構内の電気設備である電光掲示板や改札、照明、空調、拡声器などのメンテナンスや管理なども仕事の一つです。
第一種電気工事士と第二種電気工事士の違いを、工事可能な作業範囲や資格の有効期限、待遇・将来性の観点でそれぞれ解説していきます。
第一種と第二種では、工事可能な作業範囲が異なります。その違いを下表にまとめます。
工事可能な作業範囲 | 第一種電気工事士 | 第二種電気工事士 |
---|---|---|
自家用電気工作物 (600V以上かつ最大電力500kw未満) |
◯ | ✕ |
一般用電気工作物(600V未満) | ◯ | ◯ |
※参考元:「国家資格 電気主任技術者・電気工事士の試験実施機関」一般財団法人電気技術者試験センター
第二種電気工事士は一般住宅や小規模店舗・工場などの電気工事のみとなりますが、第一種電気工事士は第二種電気工事士の作業範囲に加え、大規模ビル・工場などの電気工事を行うことができます。
第一種と第二種とでは、資格の有効期限が異なります。
第二種電気工事士は資格の有効期限がありませんが、第一種電気工事士は資格の有効期限があり、5年ごとに講習受講と更新手続きが必要です。
第一種電気工事士は、第二種電気工事士よりも作業範囲が広くなることで、その分依頼される仕事や資格手当も多くなります。
第一種電気工事士の資格を取得しておくことで実務経験も積みやすくなるため、よりスキルアップ・キャリアアップにつながりやすく、将来性があると言えるでしょう。
第一種電気工事士の試験日程や試験内容、合格率について解説します。
令和4年度の第一種電気工事士試験の日程は以下の通りです。
インターネットによる申込みは初日10時から最終日の17時までで、郵便による申込みは最終日の消印有効までとなります。
自家用電気工作物の保安に関して必要な知識と技能について、筆記試験と技能試験により行われます。技能試験は、同じ年度の筆記試験の合格者もしくは筆記試験免除者が受験可能です。
筆記試験の試験項目は以下の通りです。解答形式はマークシート方式の四肢択一式です。
筆記試験の合格者と筆記試験免除者に対して試験が行われます。
下記の試験項目の中から受験者が持参した作業用工具を使い、配線図で与えられた問題を支給される材料で一定時間内に完成させる方式で行われます。
下表の項目のうち、いずれかに該当する人は申請により筆記試験が免除になります。
筆記試験免除の対象となる人 | 免除申請時に必要な証明書類 |
---|---|
前回(前年度)の第一種電気工事士筆記試験に合格した者 | 証明書類は不要 |
第一種、第二種または第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者 | 「電気主任技術者免状」の複写 |
旧電気事業主任技術者資格検定規則による電気事業主任技術者の資格を有する者 |
|
※参考元:「国家資格 電気主任技術者・電気工事士の試験実施機関」一般財団法人電気技術者試験センター
直近5年間の筆記試験と技能試験の受験者数における合格者数と合格率を下表にまとめます。
試験年度 | 筆記試験 | 技能試験 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | |
平成29年度 | 38,427人 | 18,076人 | 47.0% | 24,188人 | 15,368人 | 63.5% |
平成30年度 | 36,048人 | 14,598人 | 40.5% | 19,815人 | 12,434人 | 62.8% |
令和元年度 | 37,610人 | 20,350人 | 54.1% | 23,816人 | 15,410人 | 64.7% |
令和2年度 | 30,520人 | 15,876人 | 52.0% | 21,162人 | 13,558人 | 64.1% |
令和3年度 | 40,244人 | 21,542人 | 53.5% | 25,751人 | 17,260人 | 67.0% |
※参考元:「第一種電気工事士試験」一般財団法人電気技術者試験センター
合格率の推移は以下の通りで、難易度としては中程度の資格と言えるでしょう。
電気は、日常生活に欠かせない重要なインフラです。ここでは、第一種電気工事士の現状と今後の需要や将来性について解説します。
建設業界は2010年から約10年間にわたり、建設投資額が増加し続け好況を呈しています。
※参考元:「令和2年度(2020年度) 建設投資見通し 概要」国土交通省総合政策局
しかし、少子高齢化に伴う労働人口の減少も顕著であり、人手不足は建設業界全体の大きな課題となっています。
※参考元:「建設産業の現状と課題」国土交通省
電気工事分野でも同様に、少子高齢化により人手不足の状況にあり、若手の技術者の確保や育成が課題となっています。
※参考元:「建設業及び建設工事従事者の現状」
電気の需要は、技術の発展と共に益々増加しています。
例えば以下などにより、エネルギー需要は益々拡大しています。
それに伴い発電分野の拡大が急がれるところです。例えば以下などです。
上記で挙げた電気の消費項目や生産項目のどれ一つをとっても電気工事は必須となります。
そのため、電気工事士の仕事は増加しても減少することはなく、今後も将来性のある仕事の一つであると言えるでしょう。
第一種電気工事士の仕事内容や第二種電気工事士との違い、資格概要、現状と今後の需要について解説しました。
電気工事士は人手不足の状況にありますが、電気工事の需要は今後も益々増加していく傾向にあるため、第一種電気工事士の資格取得を検討されている方はぜひ挑戦し、電気工事士として活躍されることをオススメします。