2022年5月2日
積算業務は、建設工事に関して高い専門性を要求される仕事です。建築工事や土木工事に関する知識や計算能力、コミュニケーション能力などが求められます。
この記事では、積算の仕事内容や見積との違い、必要なスキルや資格、未経験者でも大丈夫であること、向いている人について解説します。積算業務に必要なスキルや資格などを知ることができますので、ぜひ最後までご覧ください。
積算は、建築物や土木構造物が完成するまでに金額がいくら要するのかを算出する仕事です。
建設工事費を決定する重要な仕事ですので、設計監理や施工管理などの経験者が優遇されてきましたが、最近では積算ソフトの著しい向上により経験者のノウハウを蓄積し参考にすることが可能となってきたため、積算経験の無い未経験者でも採用する建設会社などが増えています。
積算の主な仕事内容は、主に以下の通りです。
積算業務は下記の通り、やりがいの大きい仕事と言えます。
なお、建設費を決定する重要な仕事となりますので、建設工事に関わる全てのことを理解している必要があります。
見積は、積算結果に諸経費(会社経費・現場経費など)や利益を加算した金額で、工事請負提示金額となります。
一方で積算は工事原価となるため、この金額で工事を請負すると諸経費や利益が出ず、赤字となってしまいます。
見積額 = 積算額 + 一般管理費 + 粗利益
建築物や土木構造物は工事現場や規模などが全て異なる受注生産であり、工事金額もその都度異なるため積算が必要となります。
建設期間の長期化だけでなく、全く同じ工事内容であったとしても建設資材相場の変動や気象条件の違いによっても積算結果は異なるため、過去のデータは参考にはなってもそのまま使うことはできませんので注意が必要です。
積算は、計画図や設計図、仕様書などを基に必要な建設材料などの価格を算出し、必要書類を作成します。それぞれの単価を設定し、工事費用を算出します。
工事価格は、工事原価と一般管理費などで構成されます。
工事原価は直接工事費と間接工事費で構成され、直接工事費には建設資材や機材の費用、職人などの作業員の労務費などが含まれます。
人工は、標準的な施工条件を基に必要な資格者や職種を検討します。主に国土交通省が公表する「公共建築工事標準単価積算基準」などを参考にしています。
費用項目 | 費用内容 | ||
---|---|---|---|
工事原価 (積算額) |
直接工事費 | 材料費 | 各仕入先からの仕入れ値など 「材料の数量×材料の単価」で算出 |
労務費 | 人件費などで、歩掛を用いて算出 | ||
直接経費 | 水道光熱費、機械経費 | ||
間接工事費 | 共通仮設費 | 足場や仮囲いなど、仮設物の費用 | |
現場管理費 | 現場管理のために必要な経費 労務者の給料や損害保険、福利厚生費など |
||
一般管理費・販売費 | 企業の経営維持に必要な経費 一般管理費は本社経費、販売費は営業費用 |
||
粗利益 | 税引前利益 |
計画図や設計図、仕様書などから工事に必要な建設材料の数量を算出します。工法が異なると同じ工事でも数量が異なりますので、工法ごとに数量を算出する必要があります。
歩掛(ぶがかり)は、建設工事に必要な機械や資材、作業員を数値化したものです。
単価は工種ごとに、以下などを参考にします。
積算の結果として、内訳明細書には内訳書、明細書、仕訳表などを記載します。工事ごとに規格、数量、単価を表示し、記載内容にミスや漏れなどがないかを点検・確認します。
積算に必要な知識やスキル、資格を解説します。
積算業務をこなすためには、下記の知識やスキルが必要となります。
積算に必要な資格として、「建築積算士」や「建築コスト管理士」という資格があります。
建築積算士は、平成13年に国土交通省の認定資格から、行政改革の一環として民間資格に変更となりました。建築コストマネジメントの基となり、建築物の工事費や材料費の積算を行います。
日本建築積算協会認定の学校または学部において、積算の講義を受講した上で認定試験をクリアした場合、「建築積算士補」として認定されます。建築積算士補の有資格者が建築積算士の資格試験を受験する場合は一次試験が免除となり、試験費用も安くなります。
【建築積算士の試験内容】
建築積算士の試験内容を下表にまとめます。
試験内容 | |
---|---|
一次試験 (学科試験) |
「建築積算士ガイドブック」「建築数量積算基準・同解説」「建築工事内訳書標準書式」に基づく試験 |
二次試験 (短文記述試験) |
「建築積算士ガイドブック」からの論文形式 |
実技試験 | ・躯体工事、鉄骨工事、仕上げ工事などの工事費の算出、工事内訳明細作成 ・図面からの実施積算により数量を計測・計算により、工事内訳明細作成 |
【建築積算士の難易度】
国家資格の時は合格率平均が30~40%でしたが、民間資格になってからは50~70%になっています。
建築積算士以外にも、上位資格となる「建築コスト管理士」があります。
建築コスト管理士は、企画・構想から維持・保全といった建築生産過程の全般においてコスト管理を行います。
積算業務は、未経験でもチャレンジ可能です。ただし、業務に就いてからは工事に関する最低限の知識や計算能力を身につける必要がありますのでおさえておきましょう。
また、積算業務用のソフトも進歩し、わかりやすく使いやすい操作性となっていますので、未経験からの積算業務を検討している方でも安心して業務に取り組めるでしょう。
積算業務に向いている人の特徴は以下の通りです。
積算業務内容で最も多い仕事が建設材料などの数量計算であり、積算業務の根幹の仕事となります。
<例:建築工事>
主要構造部 | 構造設計図より数量を算出し、その上で単価設定、工事費を算出。 <鉄筋コンクリート造の場合> 配筋量・コンクリート量など <鉄骨造の場合> 鉄骨材などの数量算出、木造の場合、木材の数量算出 |
---|---|
内装 | 部屋ごとの床・壁・天井面積の算出 壁・床・天井などの内装材の種類を選定、単価設定、工事費算出 |
外装 | 外壁・屋根面積の算出 外壁・屋根に使用する外装・屋根材の種類を選定、単価設定、工事費算出 |
設備 | 空調・水回り設備、上下水道管・ガス管・電気配線などの仕様決定、数量算出、単価設定、工事費算出 |
積算業務は、材料や設備、工法など全てを把握して数量などを算出する必要があるため、注意深く計算できる人が向いていると言えます。
原価を抑えるために安い材料を選択すると工程に影響が出て延びてしまい、結果として人件費などで予算オーバーする可能性もあります。
また、同じものを造るのに工法の違いによっても工事価格が違ってくるため、工程とのバランスを考慮しながら工法を選別する必要があります。
そのため、積算業務を適切に遂行するためには、設計・工事・工程などの豊富な知識が求められます。
積算業務は、建設工事に関連する様々な関係者と、点検・確認・調整しながら業務を進める必要があります。そのため、積極的にコミュニケーションを取れる人は、問題点などを事前に把握することができ対策をすぐに取ることができますので、積算業務に向いていると言えるでしょう。
<例>
以上、積算の仕事内容や見積との違い、必要なスキルや資格、未経験者でも大乗なこと、向いている人について解説しました。
積算業務は建設工事費を決定する大事な役割を担う仕事ですので、建設工事に関する建築・土木知識、工法、工程、材料など幅広く建設知識をつけておく必要があります。ただ、最近では積算ソフトの著しい発展により積算実務経験者の知識やノウハウなどが蓄積されるようになっているため、積算実務未経験者でも一定の研修を受講すれば、積算業務に携わることができます。
積算業務はとてもやりがいのある仕事であり、建設知識も幅広く身につけることができますので、検討されている方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。