二級建築士の設計製図試験は難しい?試験概要と独学で勉強するためのコツを紹介
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二級建築士の設計製図試験は難しい?試験概要と独学で勉強するためのコツを紹介

2022年8月5日

二級建築士の学科試験に合格すると、次は設計製図試験となります。
設計製図試験に臨むにあたり、「どのような試験なのか?」「合格率や難易度はどの程度なのか?」「対策はどうすればよいのか?」と悩む方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、二級建築士の設計製図試験の概要や勉強方法、独学で設計製図試験に合格するためのコツについて解説します。
設計製図の未経験者であれば、繰り返し図面を描いてスピードアップを図ると同時に、エスキス(プランニング)も早くまとめられるように想定される出題パターンをあらかじめ考え練習することがポイントです。

 


 

二級建築士の設計製図試験概要

設計製図試験の試験内容や試験日、受検資格、試験地、合格基準、合格率、難易度について解説します。

試験内容

二級建築士の「設計製図試験」は、与えられた内容や条件を充たす建築物を計画し、設計する知識や技能について設計図書の作成能力が問われる試験です。
各試験年度の試験課題を下表にまとめました。

試験年度 試験課題
令和4年 「保育所(木造)」
令和3年 「歯科診療所併用住宅(鉄筋コンクリート造)」
令和2年 「シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい(木造2階建て)」
令和元年 「夫婦で営む建築設計事務所を併設した住宅(木造2階建て)」
平成30年 「地域住民が交流できるカフェを併設する二世帯住宅(鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)3階建て)」
平成29年 「家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅(木造2階建て)」
平成28年 「景勝地に建つ土間スペースのある週末住宅(木造2階建て)」
平成27年 「3階に住宅のある貸店舗(乳幼児用雑貨店)(鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)3階建て)」
平成26年 「介護が必要な親(車椅子使用者)と同居する専用住宅(木造2階建て)」
平成25年 「レストラン併用住宅(木造2階建て)」

※参照元:「二級建築士試験」公益財団法人 建築技術教育普及センター

令和4年の設計製図試験における要求図書は、以下の通りです。

  • 1階平面図兼は位置図(縮尺1/100)
  • 各階平面図(縮尺1/100)
  • 床伏図兼小屋伏図(縮尺1/100)
  • 立面図(縮尺1/100)
  • 矩計図(縮尺1/100)
  • 面積表
  • 計画の要点等

 
また、注意点は以下の通りです。

  • 建築物の階数は、試験問題の設計条件において指定
  • 答案用紙は、1目盛が4.55mmの方眼が付与、矩計図については10mmの方眼が付与
  • 建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限等)とすること

 

試験日

試験日:9月11日(日)
合格発表日:12月1日(木)

 

受験資格

設計製図試験は、学科試験に合格しなければ受験することはできません。
なお、令和2年または令和3年に実施された試験の学科試験に合格した方は、本人申請により令和4年の試験の学科試験が免除されます。

 

試験時間

試験当日の予定は以下の通りで、試験時間は5時間となります。

  • 10:45~11:00(15分):注意事項等説明
  • 11:00~16:00(5時間):設計製図

 
試験中に休憩時間はないため、長丁場の試験となります。試験が始まる前に飲食やトイレなどを済ませておくと良いでしょう。

 

試験地

試験地は主催者である公益財団法人建築技術教育普及センターが指定します。
なお、試験地までは公共交通機関の利用を促しており、試験会場やその周辺への自家用車等の駐車は不可とされていますので注意が必要です。

 

合格基準

以下では、採点のポイント、採点結果の区分・合格基準を解説します。

● 採点のポイント

採点のポイントとしては、以下などが評価対象となります。

  • 試験課題の特色に応じた計画
  • 計画一般(敷地の有効利用、配置計画、動線計画、設備計画、各室の計画など)
  • 構造に対する理解
  • 断面構成に関する知識
  • 要求図書の実現
  • 設計条件・要求図書に対する重大な不適合
    • 要求されている構造でないもの
    • 要求図書のうち図面が1面以上未完成
    • 図面相互の重大な不適合(上下階の不整合など)
    • 延べ面積が要求条件に適合しないもの
    • 著しく非常識な計画(階段、エレベーターの欠落など)

 

● 採点結果の区分・合格基準

設計製図試験の採点結果は、ランクⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの4段階区分となり、「ランクⅠ」が合格となります。

ランク ランク内容
「知識及び技能」を有するもの」
「知識及び技能」が不足しているもの
「知識及び技能」が著しく不足しているもの
設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当するもの

※参照元:「二級建築士試験」公益財団法人 建築技術教育普及センター

表中の「知識及び技能」は、二級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」をいいます。

 

合格率

設計製図試験の各試験年度における採点結果ランクの割合は、下表の通りです。
合格者は「ランクⅠ」に該当する受験者となります。

試験年度 採点結果ランク
Ⅰ(合格)
令和3年 48.6% 7.7% 31.9% 11.8%
令和2年 53.1% 6.9% 32.6% 7.4%
令和元年 46.3% 12.5% 30.1% 11.1%
平成30年 54.9% 14.5% 24.2% 6.4%
平成29年 53.2% 15.1% 25.4% 6.3%
平成28年 53.1% 16.3% 18.1% 12.5%
平成27年 54.0% 14.1% 25.1% 6.8%
平成26年 55.3% 13.5% 23.1% 8.1%
平成25年 53.0% 15.8% 21.6% 9.6%

※参照元:「二級建築士試験」公益財団法人 建築技術教育普及センター

平成25年~令和3年の合格率を見ると、46.3%~55.3%の間で推移していますので、設計製図試験の合格率は50%前後といえるでしょう。

 

難易度

設計製図の試験課題は試験日の3か月前に公表されることもあり、合格率は50%前後と高めです。
学科試験から製図試験までの期間は約2か月ですが、その間に考えられる全てのパターンを実際に設計しながら勉強をすることができれば、合格の可能性は高くなるでしょう。

 

設計製図試験の勉強方法

設計製図試験の勉強方法には、以下などがあります。

  • 独学で勉強する方法
  • 資格専門学校などに通学しながら勉強する方法

 

それらのメリット・デメリットを下表にまとめました。

勉強方法 メリット デメリット
独学で勉強する方法
  • 費用を最小限に抑えられる
  • 自身のペースで勉強可能
  • 自身でのスケジュール管理が必要
  • モチベーションの維持が困難
  • 不明点を自身で解決する必要有り
資格専門学校などに通学しながら
勉強する方法
  • スケジュール管理が容易
  • 効率の良い勉強が可能
  • モチベーションの維持が容易
  • 不明点を講師に質問可能
  • 授業料が高い
  • 通学時間・通学費用がかかる
  • 講義の進め方が自身に不適合

 
メリット・デメリットを自身の生活・業務スタイルや性格、所持金などと照らし合わせて、最適な勉強方法を選択することが大切です。いずれにしても、勉強時間の確保は必要になりますし、過去問やテキストを繰り返し解くことが重要です。

 

防火地域

防火地域とは都市計画で指定される地域で、市街地での火災を防止するため、最も厳しい建築制限が課された地域です。
防火地域の指定範囲は、幹線道路沿いや駅前地域など市街地中心部の繁華街が大半となります。

 

勉強時間の目安

勉強時間は、設計製図を日頃から描いているか、全く描いていないかによって大きく異なります。
日頃から業務で描いているのであればトレース練習の必要がない人もいますが、全く描いたことが無い人の場合は模範解答のトレースから始め、図面作成に慣れるところから始めなければなりません。
ちなみに、ある資格専門学校では毎週日曜日ごとに8時間の製図時間が設けられており、平日でも1~2時間の製図時間を割かないと課題提出ができないシステムとなっています。

 

過去問とテキストを繰り返し解く

設計製図試験の勉強方法は、過去に出題された模範解答をトレースし、描き方に慣れることが基本となります。設計製図の未経験者であれば、トレースにて図面の描き方を習得し、慣れてきたらスピードアップして素早く描き上げられるように何枚も練習する必要があります。
不明な点が出てきたらテキストなどで確認し、疑問点を残さないようにしましょう。

 

独学で設計製図試験に合格するためのコツ

独学での勉強方法を選択した場合、設計製図に合格するためのコツは主に以下の3点が挙げられます。

  • 描くスピードを上げる
  • 見やすい計算機を使う
  • エスキスを早くまとめる

 

描くスピードを上げる

上記においても触れましたが、令和4年度の設計製図試験では、下記の設計図書の作成が求められます。

  • 1階平面図兼配置図(縮尺1/100)
  • 各階平面図(縮尺1/100)
  • 床伏図兼小屋伏図(縮尺1/100)
  • 立面図(縮尺1/100)
  • 矩計図(縮尺1/100)
  • 面積表
  • 計画の要点等

 
これだけの設計図書を5時間以内で描き上げなければなりませんので、図面を描くスピードを上げないと間に合わない事態となります。不足する図面があれば当然不合格となりますし、不備が多い図面も不合格となりますので、スピード感を持って図面を描き上げる練習を繰り返し行いましょう。

 

見やすい計算機を使う

計算機は主に面積算出などによく使います。計算間違いをすると建蔽率・容積率などにも影響し、基準を満たせず不合格にならないとも限りません。そうならないためにも、数字が大きく表記されるなど見やすい計算機を使用すると良いでしょう。スマホは不可となりますので、注意してください。

 

エスキスを早くまとめる

エスキス(プランニング)をいかに早くまとめるかが合否の鍵を握ります。目安としては30分~1時間です。これ以上の時間をかけてしまうと、全体の図面作成に要する時間が不足します。
エスキスを早くまとめるには、過去問と照らし合わせて想定される出題形式を洗い出し、30分~1時間でまとまるように練習を繰り返し行う方法が一番有効です。
練習の初期段階では、時間がかかりすぎてまとまらないことの方が多いでしょう。しかし、根気よく続けていくうちに、当初3~4時間かかったエスキスが徐々に早くなり30分~1時間でまとまるようになります。

 

まとめ

二級建築士の設計製図試験概要や設計製図試験の勉強方法、独学で設計製図試験に合格するためのコツについて解説しました。
二級建築士の設計製図試験の合格率は、毎年50%前後で推移しています。
合格するコツは「図面を描き上げるスピードを早くする」ことと、「エスキス(プランニング)を30分~1時間でまとめる」ことです。
二級建築士の設計製図試験に挑戦する方は、エスキスの時間と図面作成時間のスピード化を図り、合格を勝ち取れるように勉強を繰り返し行うことを徹底すると良いでしょう。

 


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