1級電気工事施工管理技士とは?試験内容や勉強方法、メリットについて解説
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1級電気工事施工管理技士とは?試験内容や勉強方法、メリットについて解説

2022年3月10日

建設業界などにおいて、スキルアップ・キャリアアップ・年収アップを図り転職に有利に働く資格はたくさんありますが、そのうちのひとつに電気工事施工管理技士があります。
建設業界を筆頭に、電気工事施工管理技士の資格保持者に対する需要は年々大きくなっています。
そこで今回は、1級電気工事施工管理技士の概要や仕事内容、資格内容、勉強方法、メリットについて解説します。
実務経験年数が整えば試験は比較的容易となりますので、挑戦しやすい資格と言えるでしょう。

 

 

1級電気工事施工管理技士とは?

電気工事施工管理技士は、建築物や土木構造物の建設や増築などに要する「電気工事に関する施工計画の作成」「工事現場における工程管理・品質管理・原価管理・安全管理」「電気工事の監理」などを行うことが可能な建設業法に基づく国家資格です。
電気工事施工管理技士の資格は1級と2級に区分されています。

1級電気工事施工管理技士は、大規模な工事現場において4,000万円以上の電気工事を下請け会社に依頼する場合に必要な資格です。
一方で2級電気工事施工管理技士は、4,000万円未満の電気工事を下請け会社に依頼する場合に必要な資格です。
これらをまとめると下表の通りです。

工事現場における技術者の立場 1級電気工事施工管理技士 2級電気工事施工管理技士
特定建設業の電気工事の専任技術者
特定建設業の電気工事の主任技術者または監理技術者
一般建設業の電気工事の専任技術者
一般建設業の電気工事の主任技術者

 
*特定建設業:建設・設備工事などにおける元請会社で、下請け会社に4,000万円以上の工事を発注する建設業のこと

 

電気工事施工管理技士の仕事内容

1級もしくは2級電気工事施工管理技士の資格を取得すると、下記の電気工事の施工管理を行うことが可能です。

  • 発電設備工事
  • 変電設備工事
  • 送配電線工事
  • 照明設備工事
  • 構内電気設備工事
  • 非常用電源設備工事
  • 信号設備工事
  • 電車線工事

 
施工管理は、建設現場において工程管理・品質管理・原価管理・安全管理4大管理を担うため、現場に必要不可欠の職種となります。
1級と2級の仕事内容はほぼ同じですが、施工管理できる建設現場の規模に違いがあります。

  • 1級:大規模工事現場において施工管理に携わることが可能
  • 2級:中小規模工事現場において施工管理に携わることが可能

 

工程管理

工程管理は、電気工事の決められた工期を守るためにスケジュール管理を行う業務です。
電気工事には、「工期」という工事完成期限が設けられており、発注者と受注者との間で工期内に工事を完成させる契約が交わされます。
そのため、各工事の工期を調整しながら全体の工期を守り、電気工事を完成させることが重要になります。

 

品質管理

品質管理は、電気工事が設計図書や仕様書通りに工事が進捗しているかの管理を行う業務です。

 

原価管理

原価管理は、施工計画などに基づき算出した「実行予算」と工事現場での実際の工事において発注する「原価」とを比較し、利益を計上できるように管理を行う業務です。

 

安全管理

安全管理は工事現場において、安全な環境で工事作業を行なえるように整備し、事故を起こさないように管理する業務です。

 

1級電気工事施工管理技士の資格内容

令和3年度における1級電気工事施工管理技士の受験資格や試験科目、合格率、難易度について解説します。

受験資格

第一次検定と第二次検定の受験資格について解説します。

● 第一次検定

第一次検定の受験資格は下記の通りです。

  • 下表の受験資格の区分イ~ホのいずれかに該当する方は、第一次検定を受験可能です。
  • 区分イ~ニに該当する方は、第一次検定合格後、第二次検定受験手数料の支払いにより、同じ年度の第二次検定を受験できます。
  • 区分ホに該当する方は、第一次検定のみ受験可能です。この区分で第一次検定に合格した場合、そのままでは、第二次検定の受験資格を満たしていないため、今年度の第二次検定は受験できません。
    翌年度以降、区分イ~ニのいずれかの受験資格に該当するときは、第二次検定への新規受験資格が可能です。
  • 令和3年度以降の第一次検定合格は生涯有効な資格となりますので、第二次検定の受験にあたって、有効期間や受験回数の成約はありません。

区分 学歴または資格 実務経験年数
指定学科 指定学科以外
大学、専門学校の「高度専門士」 卒業後3年以上 卒業後4年6ヶ月以上
短期大学、高等専門学校(5年生)、専門学校の「専門士」 卒業後5年以上 卒業後7年6ヶ月以上
高等学校、中等教育学校(中高一貫校)、専門学校の「専門課程」 卒業後10年以上 卒業後11年6ヶ月以上
その他(学歴問わず) 15年以上
第一種、第二種または第三種電気主任技術者免状の交付を受けた者 6年以上
(交付後ではなく通算の実務経験年数)
第一種電気工事士免状の交付を受けた者 実務経験年数は問わず
2級電気工事施工管理技術検定第二次検定合格者 合格後5年以上
2級電気工事施工管理技術検定合格後、実務経験が5年未満の者 短期大学、高等専門学校(5年制)、専門学校の「専門士」 上記イの区分参照 卒業後9年以上
高等学校、中等教育学校(中高一貫校)、専門学校の専門課程 卒業後9年以上 卒業後10年6か月以上
その他(学歴問わず) 14年以上
【注】
区分ホの受験資格は、第一次検定のみ受験可能です。この区分で受験申請した場合、第一次検定合格後、今年度の第二次検定を受験することはできません。
2級電気工事施工管理技術検定第二次検定合格者 実務経験年数は問わず

 
※参考元:「令和3年度1級電気工事施工管理技術検定のご案内」一般社団法人建設業振興基金

 

● 第二次検定

第二次検定の受験資格は、下記の通りです。
下記のいずれかに該当する方が、受験申込可能です。

  • 本年度第一次検定の合格者(上記の区分イ~ニの受験資格で受験した者に限る)
  • 技術士法による技術士の第二次試験のうちで、技術部門を電気電子部門、建設部門または総合技術管理部門(選択科目が電気電子部門または建設部門)に合格した者で、なおかつ1級電気工事施工管理技術検定第一次検定の受験資格のうち、上記区分イ~ニのいずれかの受験資格を有する者

 
令和3年度(2021年度)4月より受験資格の緩和がありました。
2級第二次試験合格者が1級第一次検定を受験する場合、実務経験年数による受験資格は不要になります。
ただし、1級第二次検定を受験する場合、合格後5年以上の実務経験が必要となります。


資格取得の流れは、2級を取得後、1級を取得するケースが多い傾向にあります。
なお、電気工事現場での経験年数が長い人や第一種電気工事士の資格保持者などは、2級を受けずに1級から受験する人もいます。

 

試験科目

第一次検定の試験科目は、電気工学等、施工管理法、法規となります。
また、第二次検定の試験科目は、施工管理法となります。

● 第一次検定

第一次検定の検定科目・基準・解答形式は下表の通りです。

検定科目 検定基準 解答形式
電気工事等
  • 電気工事の施工管理を的確に行うために必要な電気工事、電気通信工事、土木工学、機械工学、及び建築学に関する一般的な知識を有すること
  • 電気工事の施工管理を的確に行うために必要な発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等に関する一般的な知識を有すること
  • 電気工事の施工管理を的確に行うために必要な設計図書に関する一般的な知識を有すること
四肢択一式
施工管理法
  • 監理技術者補佐として、電気工事施工管理を的確に行うために必要な施工計画の作成方法及び工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工管理方法に関する知識を有すること
四肢択一式
  • 監理技術者補佐として、電気工事施工管理を的確に行うために必要な応用能力を有すること
五肢択一式
法規
  • 建設工事の施工管理を的確に行うために必要な法令に関する一般的な知識を有すること
四肢択一式

 

● 第二次検定

第二次検定の検定科目・基準・解答形式は下表の通りです。

検定科目 検定基準 解答形式
施工管理法
  • 監理技術者として、電気工事の施工管理を的確に行うために必要な知識を有すること
五肢択一式
  • 監理技術者として、設計図書で要求される発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等(以下、電気設備と表記)の性能を確保するため設計図書を正確に理解し、電気設備の施工図を適正に作成し、及び必要な機材の選定、配置等を適切に行うことができる応用能力を有すること
記述式

 

合格率

1級電気工事施工管理技士の合格率の推移は、下表の通りです。

試験年度 学科試験 実地試験
平成25年度 45.8% 58.4%
平成26年度 35.6% 63.1%
平成27年度 45.1% 63.4%
平成28年度 46.0% 69.1%
平成29年度 48.0% 62.5%
平成30年度 56.1% 73.7%
令和元年度 40.7% 66.3%
令和2年度 38.1% 72.7%
改正後 第一次検定 第二次検定
令和3年度 53.3%

 
※参考元:「令和3年度1級電気工事施工管理技術検定のご案内」一般社団法人建設業振興基金 施工管理技術検定

 

難易度

1級電気工事施工管理技士の近年の合格率は以下の通りで、比較的高い合格率となっています。

  • 第一次検定(学科試験):40%~60%
  • 第二次検定(実地試験):60%~75%

 
したがって、試験の難易度は低いといえますが、受験資格において、実務経験年数として相当期間を要するため、容易に受験申込はできないため注意が必要です。

試験内容は似た問題が繰り返し出題される傾向にあります。過去問に対して重点的に取り組めば、合格する可能性は高くなると言えるでしょう。

 

1級電気工事施工管理技士の勉強方法

1級電気工事施工管理技士の資格勉強として効果的な方法は、過去問を繰り返し解くことです。過去問を10年分準備し全て理解して解けるようになると、合格する可能性は非常に高くなるでしょう。
勉強方法については、独学する方法通信(WEB)講座を受講する方法があります。

独学する方法

独学する方法のメリット・デメリットは下表の通りです。テキストと過去問題集を同時並行で進めるのが良策といえます。

メリット デメリット
  • どこでも勉強できる
  • 自分のペースで勉強できる
  • 費用が一番安くて済む(書籍代のみ)
  • スケジュール管理が必要になる
  • 質問ができないため、不明点を自身で解決する必要がある

 

独学する方法

通信(WEB)講座を受講する方法のメリット・デメリットは下表の通りです。

メリット デメリット
  • デバイス(PC、スマホ)があればどこでも受講できる
  • デバイスがあれば繰り返し受講できる
  • 講師陣が充実
  • 教材が充実し、合格に直結する講義内容
  • 相談・質問はメール・ZOOM等で対応
  • 受講料がかかる
  • デバイスが必要
  • インターネット通信環境が必要
  • スケジュール管理が必要になる

 

1級電気工事施工管理技士の取得メリットは?

1級電気工事施工管理技士の取得メリットは、監理技術者になれることや経審の技術力評価に加点されること、独立するのに有利なことが挙げられます。

✓ 監理技術者になれる

1級電気工事施工管理技士を取得すると、監理技術者になることができます。
監理技術者は、元請となる特定建設会社が4,000万円以上(建築一式工事の場合:6,000万円以上)の工事を下請け会社に発注する場合、工事現場に設置する義務があります。

 

✓ 経営事項審査において勤務する工事会社に加点

1級電気工事施工管理技士は、経審(経営事項審査)の技術力評価において、資格保持者1人あたり5点が加算されます。
また、監理技術者資格証を保有し、講習の受講者に対して更に1点が加算されます。
他にも、1級電気工事施工管理技士補の場合、資格保持者1人あたり4点が加算されます。
この得点は、公共工事を受注する際に技術力として評価されます。そのため、取得することで経営規模評価を上げることになるため、勤務先に貢献することが可能となります。

 

✓ 独立するのに有利

電気工事を直接行う第一種・第二種電気工事士の資格も併せて取得すると、独立する際に業務の幅が広がり有利に働きます。
施工管理もでき、電気工事もできる有資格者は貴重な存在となりますので、独立しても仕事の依頼は絶えることがないと考えられるでしょう。

 

技士補の創設

第一次検定に合格すると、「技士補」といわれる新規資格が創設されました。技士補になると、第一次検定が免除となり、第二次検定を制限なく受験することができます。
また、監理技術者の配置義務が緩和されるため、建設会社や電気工事会社にとって、技士補の資格保有者が所属していると有利に働きます。
電気工事施工管理技士を目指す人にとっては、実務経験年数が不足している場合でもまずは技士補を取得することにより、スキルアップ・キャリアアップにつなげることができるでしょう。

 

まとめ

電気工事施工管理技士は、建設業界内での需要が非常に高い資格となるため、電気工事部門をメインとする工事会社にとっては引手あまたとなるでしょう。
特に、1級電気工事施工管理技士は、大規模建設現場で監理技術者になることができるため、年収アップを図ることも可能ですので、電気工事に携わる方や資格取得を検討されている方は、ぜひ1級電気工事施工管理技士の資格取得を目指されることをオススメします。

 

 


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