測量士とは?仕事内容や年収、必要な資格を解説
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測量士とは?仕事内容や年収、必要な資格を解説

2022年1月21日

建築物や土木構造物を計画・設計する際、それらの基本情報として、計画地内や計画地周辺の正確な土地情報が必要になります。測量士は、その現場に赴き、必要とされる土地の位置・距離・面積・高低差・方位などを測量する技術者です。現地での測量データを基に、建築物や土木構造物の発注者や計画立案者に対して測量図や測量データを提供します。
この記事では、測量士の概要や仕事内容、年収、必要な資格について解説します。
測量士は、実績・ノウハウ・スキルもさることながら、体力・気力も必要な仕事であることがわかりますので、測量士への転職を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

 

測量士とは

測量士は、建築・土木工事を施工する土地について、位置・距離・面積・高低差・方位などを測量するスペシャリストです。国家資格であり、業務独占資格となります。
測量法第48~49条に測量士及び測量士補の規定がありますので引用します。

第48条(測量士及び測量士補)
技術者として基本測量*1又は公共測量*2に従事する者は、第49条の規定に従い登録された測量士又は測量士補でなければならない。

  1. 測量士は、測量に関する計画を作成し、又は実施する。
  2. 測量士補は、測量士の作成した計画に従い測量に従事する。

第49条(測量士及び測量士補の登録)
次条又は第51条の規定により測量士又は測量士補となる資格を有する者は、測量士又は測量士補になろうとする場合においては、国土地理院の長に対してその資格を証する書類を添えて、測量士名簿又は測量士補名簿に登録の申請をしなければならない。

  1. 測量士名簿及び測量士補名簿は、国土地理院に備える。

※参考元:「測量法」e-GOV法令検索

*1:基本測量(測量法第4条)
全ての測量の基礎となる測量で、国土地理院の行う測量をいいます。

*2:公共測量(測量法第5条)
基本測量以外の測量で、次に掲げるものをいいます。
① その実施に要する費用の全部又は一部を国又は公共団体が負担し、又は補助して実施する測量
② 基本測量又は①の測量成果を使用して次に掲げる事業のために実施する測量で、国土交通大臣が指定するもの
イ 行政庁の許可、認可その他の処分を受けて行われる事業
ロ その実施に要する費用の全部又は一部について国又は公共団体の負担又は補助、貸付けその他の助成を受けて行われる事業

 
ただし、「建物に関する測量その他の局地的測量」「小縮尺図の調整その他の高度の精度を必要としない測量」で、政令で定めるものを除きます。
例えば、建築工事における柱や壁、梁の仕上げ位置を示す「墨出し」などは、測量士の資格無しでも行うことができます。

 

測量士の仕事内容

測量士の仕事は、「測量法」の規定に従って行われます。
具体的な仕事内容は、下記の通りです。
・測量法第48条に基づいた測量計画立て・実施
・土木工事や建築工事を行う敷地の位置や面積・距離・高低差・方位などを計測
・測量したデータを平面図・縦断図・断面図などに製図化
・測量したデータを分析し、デジタルデータや報告書として整理
・測量に関わる原価管理
・測量に使用する機器の調達・整備

測量は行う作業の場所により、以下に分けられます。
・街中や山中・川辺・海辺などで行う外業(外の仕事)
・製図作業・データ整理などのデスクワークを行う内業(事務所内での仕事)

日中は、現地において土地の様々なデータを測量する外業を行い、事務所に帰社してから、測量したデータを整理し、製図化・報告書化を行います。
また、雨や雪などの悪天候の場合、事務所内での作業に終始する場合もあります。そのため、体力を要する仕事といえます。

外業

外業は、建築・土木工事の現場において、計画・設計の基になる土地の地形データ(位置・距離・面積・高低差・方位)を測量する仕事です。野外作業となりますので、天候や時間帯に配慮しながら測量を行います。
山間部など、早朝から作業にかからないと手元が樹林などで暗くなり、作業が困難になる現場もあります。そのためにも、外業のスケジュールは天気予報・測量現場環境・往復時間などを考慮しながら決めます。
また、自然を相手にする仕事となるため、以下のように体力・気力を求められる現場もあります。
・道の無い険しい坂やがけ地での昇り降り
・夏場の日陰の無い炎天下での作業
・冬場の寒風下での作業

測量機器としては、トランシット・光波測距儀・GPS・トータルステーションなどを使用します。

 

内業

内業は、測量計画・製図・測量データ分析・予算管理・機器調達など、事務所内でのデスクワーク全般で、パソコンを利用する業務が多くを占めます。
特に測量機器は、IT技術の進化と共に測量精度や作業効率の向上に加え、デザインも良くなっています。

 

公共系・民間系

公共系

公共系の仕事には、公共インフラとなる道路工事や河川工事、海岸工事に伴う土地の基礎情報データとなる測量があります。

民間系

民間系の仕事には、住宅地や商業地などにおいて、隣地との境界確定や道路との境界明示などに伴う測量があり、土地家屋調査士と関連する仕事が多くなります。

 

測量士の年収

測量士の平均年収は、約450万円です。日本の平均年収と比較すると、高い傾向にあります。
正社員の年収分布によると、ボリュームが大きい年収分布帯は382万円~443万円であるため、平均年収の450万円は、この年収分布帯よりも高い水準にあります。
「勤務先」「経験・ノウハウ」「保有するスキル」などによって大きな格差が出ると考えられるため、全体の年収幅としては260万円~748万円と比較的広くなります。

また、月給で換算すると、平均37万円、初任給20万円が相場となります。
非正規雇用の場合は以下の通りです。
・アルバイト・パート:平均時給998円
・派遣社員:平均時給1,396円

※参考元:「測量の仕事の年収・時給・給料」求人ボックス給料ナビ

 

測量士に必要な資格

測量士に必要な資格は、「測量士」または「測量士補」という国家資格(国土交通省所管)です。
基本測量・公共測量は、測量士の資格を持つ者でなければ行うことができないと規定されています。

測量士

測量士の資格を取得すると、基本測量・公共測量に従事することができます。また、測量法第48条により、測量士は測量計画を作成することができます。
ただし、測量業務を行うには、測量士の資格取得後、国土地理院に登録申請を行う必要があります。なお、登録免許税として、測量士は30,000円の納付が必要です。

< 測量士になる条件 >

測量士になるには、下記のいずれかを満たす必要があります。

①文部科学大臣の認定した大学、短期大学、又は高等専門学校において、測量に関する科目を修め、当該大学等を卒業し、測量に関し実務経験(大学は1年以上、短大・高等専門学校は3年以上)を有する方
②国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設において1年以上測量士補となるのに必要な専門の知識及び技能を習得し、測量に関して2年以上の実務経験を有する方
③測量士補で、国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設において、高度の専門の知識及び技能を習得した方
④国土地理院が行う測量士試験を習得した方

※参考元:「国家資格「測量士・測量士補」とは」公益社団法人日本測量協会

 

< 測量士の試験概要 >

国土地理院が行う測量士試験の概要を解説します。

【試験時間】
午前:択一式28問:2時間30分
午後:記述式:2時間30分

【試験科目】
・測量に関する法規及びこれに関連する国際条約
・多角測量
・汎地球測位システム測量
・水準測量
・地形測量
・写真測量
・地図編集
・応用測量
・地理情報システム

【合格率】

測量士試験の直近5か年の合格率は、下表の通りです。

試験実施年度 受験者数 合格者数 合格率
平成29年度 2,989人 351人 11.7%
平成30年度 3,345人 278人 8.3%
令和元年度 3,232人 479人 14.8%
令和2年度 2,276人 176人 7.7%
令和3年度 2,773人 498人 18.0%

 
直近5か年間の平均合格率は、約12.1%です。

 

測量士補

測量士補の資格を取得すると、基本測量・公共測量に従事することができます。また、測量士法第48条により、測量士補は測量士が作成した測量計画に従い、測量業務を行うことができます。
ただし、測量業務を行うには、測量士補の資格取得後、国土地理院に登録申請を行う必要があります。なお、登録免許税として、測量士補は15,000円の納付が必要です。

< 測量士補になる条件 >

測量士補になるには、下記のいずれかを満たす必要があります。

①文部科学大臣の認定した大学、短期大学、又は高等専門学校において、測量に関する科目を修め、当該大学等を卒業した方
②国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設において1年以上測量士補となるのに必要な専門の知識及び技能を習得した方
③国土地理院が行う測量士補試験を習得した方

※参考元:「国家資格「測量士・測量士補」とは」公益社団法人日本測量協会

 

< 測量士補の試験概要 >

国土地理院が行う測量士補試験の概要を解説します。

【試験時間】
13:30~16:30 3時間

【試験科目】
問題数:合計28題、1問25点の700点満点
・測量に関する法規
・多角測量
・汎地球測位システム測量
・水準測量
・地形測量
・写真測量
・地図編集
・応用測量

合格率

測量士補試験の直近5か年の合格率は、下表の通りです。
合格基準は、28問中18問(約65%)正解、450点以上で合格となります。

試験実施年度 受験者数 合格者数 合格率
平成29年度 14,042人 6,639人 47.30%
平成30年度 13,569人 4,555人 33.60%
令和元年度 13,764人 4,924人 35.80%
令和2年度 10,361人 3,138人 30.3%
令和3年度 12,905人 4,490人 34.8%

 
直近5か年間の平均合格率は、約36%です。

 

測量士として開業するにあたり、追加しておきたい資格

測量士の資格を有することで、独立開業を目指すことができます。しかし、業務独占資格とはいえ、測量士の資格保持だけでは、安定した経営は困難となるため、他の資格を併用することにより、安定した経営を維持することができます。
具体的な資格としては以下などです。
・土地家屋調査士
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・施工管理技士(土木・建築・電気・管工事)
・建築士(一級・二級・木造)
・行政書士

上記資格を取得することで、仕事の幅が広がり、ノウハウ・スキル向上を図ることができ、顧客の信頼を得ることに繋がります。

 

まとめ

以上、測量士の概要や仕事内容、年収、必要な資格について解説しました。
測量士は自然を相手にした仕事であり、天候に左右されやすい仕事でもあります。したがって、実績・ノウハウ・スキルだけでなく、体力・気力も必要になる仕事です。
一方、測量士は、建築や土木の工事計画の基礎を作成する仕事となりますので、几帳面で正確なアウトプットが求められます。それだけに、測量士の平均年収は日本の平均年収よりも高い傾向にありますので、測量士になることを検討されている方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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