2021年12月15日
ふだん日常で何気なく使っているエアコンや換気システムは、様々な空調設備工事によって使うことができています。空調設備は室内を快適に過ごすために欠かせない設備であり、今後も更なる需要が見込まれています。
そこで今回は「空調設備施工管理」に着目し、仕事内容や資格について解説します。建設業界に興味のある方や施工管理の仕事へ転職を希望している方は必見です。
そもそも空調設備は、温度・湿度・換気・気流などを調整する設備のことです。室内の空気のめぐりを良くし、さらに室内を適温に保つ効果があります。
また、室内の空気をきれいにする設備もあり、様々な空調設備が私たちの生活を支えています。
その空調設備に携わる仕事が「空調設備施工管理」です。空調設備施工管理とは、空調設備に関する工事の管理者を指します。
空調と聞くと「エアコン」のイメージが強いかもしれませんが、建設における空調設備には「熱源設備」「熱搬送設備」「空気調和設備」の3つの種類があります。そして空調設備施工管理は、これらの工事を監督しています。
熱源設備 | ボイラー・冷凍機・ヒートポンプ・蓄熱槽・吸収冷温水機など |
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熱搬送設備 | 配管・ポンプ・送風機・ダクトなど |
空気調和設備 | 加湿を行う加湿器・熱交換を行う冷却コイルや加熱コイル・エアフィルターなど |
熱源設備は文字の通り、熱を生み出す設備のことです。ボイラーや温水器など熱を発生させる源を計画し、設置や修繕を行います。
また、熱搬送設備は発生した熱源を移動させる設備です。天井内の配管やダクトなどが該当します。
そして空気調和設備は、送り込んだ熱を適切な状態へ整える設備工事です。エアコンや加湿器がこれらに該当します。
空調設備の施工管理者は、これらの知識や現場経験が重要です。それぞれ作業が異なるので、すべての業務を統括できるよう専門的な勉強が必要になるでしょう。
しかし最近では未経験者を採用し、自社で教育する企業が増えてきています。そのため未経験者でも、空調設備施工管理に興味のある方であれば転職は可能です。
空調設備施工管理の仕事内容は主に下記の5つです。
– 工程管理:工事スケジュールの調整、詳細工程の検討
– 品質管理:完成物の仕上がりチェック、是正の指示など
– 安全管理:職人の健康管理や、安全な現場状況の整備
– 原価管理:下請け業者に支払うお金の管理 など
– その他事務処理:届出や工事書類の作成など
施工管理者として、空調設備に関する上記の管理を行います。まず工事が円滑に進むよう、空調設備の作業員を適切な日時に配置します。
建築の新装工事や大型改修工事の場合、その大半がゼネコンの工程表に合わせて作業しなければなりません。そのため建築工事との取り合いを考え、適切なスケジュールを組むことが大切です。そのため空調設備施工管理者は、空調設備と絡む作業に関する知識が必要になります。
また、工事監督者として空調設備の工事品質や工事中の安全管理も行わなければなりません。ダクト関連や機器との接続部は、天井内や床下に隠蔽されるケースがほとんどです。そのため工事中に細かく点検し、異常がないことを確認した上で作業を進めていきます。
工事写真の撮影や、是正指示なども施工管理者の仕事です。定期的に検査を行い、手戻り作業が発生しないように注意しましょう。
さらに、工事金額の管理や下請け業者との金額調整も、施工管理者の仕事になります。見積りから変更した箇所や追加内容などを取りまとめて、適切な金額を下請け業者に支払わなければなりません。クライアントとの契約金額調整は営業が担当し、業者間の工事金額は施工管理者が行うケースが多くあります。
他にも工事に関する届出や検査結果の証明書など、工事に関する様々な書類の対応があります。これらの書類は締め切り厳守のものが多く、遅延すると工事に支障をきたすでしょう。期日に余裕を持って作成することをオススメします。
空調設備施工管理技士に役立つ資格を2つ紹介します。下記資格の保有者は優遇されることが多いので、経験者の方は以下の資格取得を検討してはいかがでしょうか。
まず一つ目は「管工事施工管理技士」です。管工事施工管理技士とは、冷暖房設備や空調設備、上下水道設備、吸排気ダクト、ガス管、浄化槽などの配管工事を管理する施工管理者です。これは、一般財団法人全国建設研修センターが主催する「管工事施工管理技術検定」の合格者を指します。
この試験は1級と2級に分かれており、それぞれ第1次検定と第2次検定があります。試験内容は第1次検定がマークシート方式の選択問題で、第2次検定は現場経験を基に自身の考えを回答する記述式の問題です。
1級管工事施工管理技士の資格を取得すると、特定建設業の「営業所ごとに置く専任の技術者」及び現場に配置する「監理技術者」として認められます。
また、2級管工事施工管理技士の資格であれば、一般建設業の許可を受ける際に必要な「営業所ごとに配置する専任の技術者」及び「建設工事における主任技術者」として認められる等、管工事の施工管理に携わる方には重要な資格です。
ただし、それぞれ受験資格があるため、まずは受験資格の有無を確認しましょう。受験資格に関してはこちらより確認いただけます。
https://www.jctc.jp/exam/kankouji-1
電気工事士とは、電気工事の作業に従事するために、電気工作物の工事に関する専門的な知識と技能を有する者に与えられる国家資格です。これは一般財団法人電気技術者試験センターが主催する「電気工事士試験」の合格者を指します。
この資格は、電気工事の欠陥による災害の発生を防止するために、電気工事士法によって一定範囲の電気工作物について電気工事の作業に従事する者の必須資格です。空調設備は、電気工事との関係が深い工種なので、この資格を取得すると電気工事業者との連携が取りやすくなります。工事がスムーズに進むため、空調設備に関わる管理者にオススメの資格なのです。
電気工事士の試験も同じく第一種と第二種に分かれており、それぞれ1次試験と2次試験があります。1次試験の内容はマークシート方式の選択問題で、2次試験は実技試験です。
第二種電気工事士は「一般住宅や店舗などの600ボルト以下で受電する設備の工事」において作業が可能です。
また、第一種電気工事士は「第二種の範囲と最大電力500キロワット未満の工場、ビルなどの工事」で従事できます。
つまり第一種資格取得者の方が業務範囲が広いため、難易度の高い資格と言えます。ただし施工管理者は実際に作業を行わないので、第二種の資格でも十分でしょう。この資格を取得していると、条件交渉などで有利に働くこともあります。
最後に空調設備施工管理に向いている人の特徴を5つ紹介します。
空調設備工事は細かな作業が多々あります。施工管理者が実際に作業することはありませんが、工事監督者として細かなチェックは必要です。
プラモデルなどの組み立て作業が好きな方、細かな作業をしていて疲れない方は、空調設備施工管理者に向いているでしょう。
現場には日々たくさんの関係者が出入りします。現場監督として、多くの関係者と協力して工事を進めなければなりません。
建設業界は大勢の力を借りて、ひとつのものを創り上げる仕事です。ひとりで黙々と作業するよりも、たくさんの人と関わることが好きな人にオススメです。
空調設備は人々の暮らしと密接に関わっています。ビルや商業施設、住宅など、工事の種類は様々ですが、どの仕事も「暮らし」と関係しています。
人の暮らしに関わる仕事がしたい方には、ぴったりの仕事と言えるでしょう。
空調設備施工管理の経験を積むと、商業施設の管理部門や店舗設計など様々な業界から重宝される存在になります。そのためキャリアチェンジがしやすく、理想とする働き方ができるでしょう。
施工管理者として重要な資質は「リーダーシップ」です。大勢の作業員を束ね、現場を進めるためにも統率力は必要になります。
自分の考えをはっきりと伝える力や、他人の意見を聞き入れる力がある方は、施工管理の仕事に向いている人です。
空調設備施工管理は、空調設備に関する専門的な知識が必要です。それに加えて作業員を取りまとめるリーダーシップや、コミュニケーション能力も重要になりますが、最近では多くの企業で知識がない方でも積極的に採用を行っています。
空調設備の分野に興味のある方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。