設備施工管理とは?仕事内容や求められるスキルを解説
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設備施工管理とは?仕事内容や求められるスキルを解説

2021年10月5日

建設業界は、好景気が続いています。その様な状況下において、電気・配管・空調・通信・機械・消防の6種類の設備工事を管理する、設備施工管理の仕事に関心を寄せられる方も少なくはないはずです。そこで今回は、設備施工管理の概要や仕事内容、求められるスキル、役立つ資格について解説します。
それぞれに役立つ資格や求められるスキルを知ることができますので、ぜひ最後までご覧ください。

 


 

設備施工管理とは

設備施工管理は、建築施工管理や土木施工管理同様に、主に以下の業務を担います。
・工程管理:建設工事の決められた工期(納期)を守るためのスケジュール管理
・安全管理:建設現場における安全な環境の確保・管理
・品質管理:建設構物が設計図書や仕様書通りに造られているかの管理
・原価管理:「実行予算」と「原価」に差異が生じないように工事の進捗と原価を管理

上記の業務に加え設備施工管理には、電気設備・配管設備・空調設備・通信設備・機械設備・消防設備の6種類の管理業務があります。

 

6種類の管理業務内容

それぞれの設備工事における主な工事は下表の通りです。

施工管理の対象設備 主な工事
電気設備 電気の引込み工事、分電盤の配置工事、コンセントの配置工事
配管設備 水道管工事、排水管工事、ガス管工事
空調設備 エアコン工事、換気設備工事、排煙設備工事
通信設備 電話線工事、ネット回線工事
機械設備 プラント建設、エレベーター設置工事、エスカレーター設置工事
消防設備 消防設備工事、消火栓工事、非常用エレベーター設置工事

表1.設備施工管理の種類と主な工事

 

設備施工管理のメリット・デメリット

設備施工管理のメリット・デメリットは下表の通りです。

メリット デメリット
  • 工事現場に屋根がある場合が多く、天候に左右されにくい
  • スキルが身につくほどに年収増加
  • 実績が積まれると、転職が有利になり、スカウト対象の可能性も大
  • 室内工事の場合、残業が多くなる傾向
  • 建築工事や土木工事が遅れると、設備工事にしわ寄せがきて激務になる傾向あり
  • 激務になると、全体の工期を守るために、休日が取れなくなる傾向あり

表2.設備施工管理の種類と主な工事

 

設備施工管理の仕事内容①

先程解説した通り、設備施工管理の仕事内容は、「4大管理」といわれる工程管理や安全管理、品質管理、原価管理がメイン業務となります。
以下ではそれぞれの仕事内容を詳しく解説していきます。

工程管理

工程管理は、設備工事の決められた工期を守るために、スケジュール管理を行う業務です。
発注者と受注者との間において、工期内に設備工事を完成・引渡しを行う契約が交わされます。設備工事内の各種専門工事の工期を調整しながら全体の工期を守り、設備工事を完成・引渡すためには、多くの技術者が関わる工事現場を取りまとめ、効率よく工事を進捗させる必要があります。
そのため、各専門工事の作業ごとに日程調整を行うスケジュール管理能力が設備施工管理者には必要と言えるでしょう。

 

安全管理

安全管理は、工事現場において安全な環境で作業を行えるように整備し、事故を起こさないように管理する業務です。その対策として、主に以下を行います。
・KYK:危険予知活動
・SS運動:整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)
・ヒヤリハット運動

また、工事作業開始時などに技術者などの作業員を集め、安全対策としての知識や意識向上のために準備・点検・確認を毎日行い、事故を未然に防ぐようにします。特に設備施工管理は危険が伴う工事が多いので、十分な注意が必要です。

 

品質管理

品質管理は、設備が設計図書や仕様書通りに造られているかの管理を行う業務です。
具体的には、主に以下を確認します。
・設計図書に記載されている寸法通りに、設備が造られているかの点検・確認
・仕様書に記載されている通りの強度や機能・材質に、設備が造られているかの点検・確認

評価対象ごとに決められた試験方法や点検方法などで確認を行い、品質を確保します。
また、品質保持を証明するために以下のような施工記録の作成も行います。
・試験によるデータ結果の記録
・施工写真を撮影して記録

 

原価管理

原価管理は、施工計画などに基づき算出した「実行予算」と現場での実際の工事において発生する「原価」を比較し、利益計上できるように管理を行う業務です。
仮に実行予算よりも原価の方が大きくなる場合、利益計上が難しくなります。その対策として、施工管理者は主に以下を行い、実行予算と原価を調整しながら利益計上できるように管理を行います。
・施工計画の見直し
・技術者などの変更

 

設備施工管理の仕事内容②

次に、設備施工管理ならではの6種類の仕事内容をそれぞれ詳しく解説していきます。

電気設備

電気設備の施工管理の仕事内容は、電気工事士などの作業員を監督し、工事を期限内に完了できるように管理することです。
主な電気設備工事としては、電気の引込み工事、分電盤の配置工事、コンセントの配置工事があります。
主な仕事内容を下表にまとめます。

施工管理 仕事内容
工程管理
  • 建設物が期限内に完成するように、工事のスケジュール作成・管理
  • 現場の進捗状況を写真撮影し、記録して管理
  • 工事が遅延している場合、スケジュール修正し、間に合うように作業員に指示
安全管理
  • 朝礼の指揮
  • 現場の掃除
  • 作業員の安全が保たれるように環境準備
品質管理
  • 作業員への技術的な指導・指示
  • 工事の出来具合を写真撮影
  • 作業員がスムーズに働けるように準備
  • 各種試験を行い、データ結果を記録して管理
原価管理
  • 工事原価が実行予算内におさまるように調整
  • 施工計画の見直し
  • 下請け業者や技術者などの変更

表3.設備施工管理の種類と主な工事

 
その他にも、管理業務に伴う事務作業や顧客・下請け業者との打ち合わせなどがあります。上表の仕事内容は、他の設備施工管理においても同様です。
電気設備工事の施工管理業務は、仕事量において安定しているのが特徴です。電気設備の新設や保守・点検・修繕の需要は安定的にあるため、電気工事の技術者に対する需要は高まっている傾向にあります。

また、電気設備の施工管理業務で活かせる資格には、「電気工事施工管理技士」や「電気工事士」などがあります。

 

配管設備

配管設備の施工管理の仕事内容は、配管技術者などの作業員を監督し、工事を期限内に完了できるように管理することです。
主な配管設備工事としては、水道管工事、排水管工事、ガス管工事があります。
主な業務内容は、上記の「表3.電気工事施工管理の仕事内容」と同様です。

設備施工管理は新設工事だけでなく、メンテナンス工事も重要な業務となります。
例えば、水道管工事の場合、建築物に合う給水方式を選定し、建築物完成後のメンテナンスがしやすいように設計・施工管理を行うことが重要です。
給水方式には、水道直結方式、増圧給水方式、受水槽方式の3方式があります。

給水方式 給水方式の内容
水道直結方式
  • 上水道本管から直接給水する方式で、上水道本館からの圧力だけで給水
  • 主に戸建住宅に採用
増圧給水方式
  • 水道直結方式に増圧ポンプを組み合わせて上層階にも給水できる方式
  • 3~5階建ての建築物に採用
受水槽方式
  • 上水道管からの水を受水槽に貯めて給水する方式
  • 加圧給水方式と高置水槽方式の2種類有り
  • 5階以上のマンションやビルに採用

表4.設備施工管理の種類と主な工事

 
また、配管設備の施工管理業務で活かせる資格には、「管工事施工管理技士」などがあります。

 

空調設備

空調設備の施工管理の仕事内容は、空調技術者などの作業員を監督し、工事を期限内に完了できるように管理することです。
主な空調設備工事としては、エアコン工事、換気設備工事、排煙設備工事があります。
主な業務内容は、上記の「表3.電気工事施工管理の仕事内容」と同様です。

空調設備は、大きく分けると4種類に分類されます。

空調の種類 空調方式の内容
対流式(エアコン)
  • セントラル空調:建物内の空調を一括管理している方式、商業施設に多く採用
  • 個別空調:部屋ごとに空調を調整できる方式、ホテルやオフィスビルに採用
放射式(ヒーター)※1
  • セントラル方式:冷暖房の床暖房、放射式冷暖房システム、温水式パネルヒーター
  • 個別方式:電気式パネルヒーター、蓄電式電気暖房機、オイルヒーター
伝導式(床暖房)※2
  • 床暖房
  • ホットカーペット
換気 室内の汚れた空気を外に出す方式

表5.設備施工管理の種類と主な工事

※1:放射式は床と壁に設置するヒーターのこと
※2:床のみを温める方式

 
空調設備の施工管理業務で活かせる資格には、「管工事施工管理技士」や「電気工事施工管理技士」、「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」などがあります。

 

通信設備

通信設備の施工管理の仕事内容は、通信技術者などの作業員を監督し、工事を期限内に完了できるように管理することです。
主な通信設備工事としては、電話線工事、ネット回線工事があります。
最近では、モバイル通信基地局の工事や大型サーバー設置工事、LAN工事などが増加しています。
主な業務内容は、上記の「表3.電気工事施工管理の仕事内容」と同様です。

また、通信設備の施工管理業務で活かせる資格には、「電気通信工事施工管理技士」などがあります。

 

機械設備

機械設備の施工管理の仕事内容は、機械技術者などの作業員を監督し、工事を期限内に完了できるように管理することです。
主な機械設備工事としては、プラント、エレベーター設置工事、エスカレーター設置工事などがあります。
主な仕事内容は、上記の「表3.電気工事施工管理の仕事内容」と同様です。

例えば、プラントの場合、石油化学工場や無菌室、危険物を流す管など、建築や土木と異なり特殊な設備があるため、それらの設計・施工管理を行う必要があります。
また、プラントには以下のような確認業務があり、全ての個所が正常に稼働しているかの確認が重要となっています。
・品質検査  :設置された機械の点検、工場で造られた物が、品質を保っているかの点検
・プラント保守:機械の点検、設備の点検、試運転

さらに、プラントには4種類あります。

各種プラント プラントの施工管理内容
建設プラント
  • 電気系:プラントに電力を送電する仕組みの建築
  • 機械系:プラント内の機械設計や建築
化学プラント
  • 化学工場、石油化学工場の建築
  • 工場内の機械の建築、電気系統の工事
環境プラント
  • 下水処理場の建設
  • 廃棄物処理場の建設
  • 自然エネルギー発電施設の建設
食品プラント
  • 電気設備の設計や建築
  • 衛生的な工場の建築
  • 無菌室の設計・建築

表6.設備施工管理の種類と主な工事

 
プラントは特に安全管理業務において危険度が大きくなるため、その分管理項目も多くなります。
例えば、危険物・毒物の取り扱いや火災・爆発の防止などです。

また、機械設備の施工管理業務で活かせる資格には、「管工事施工管理技士」や「電気工事施工管理技士」、「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」、「建築設備士」、「危険物取扱者」などがあります。

 

消防設備

消防設備の施工管理の仕事内容は、消防設備技術者などの作業員を監督し、工事を期限内に完了できるように管理することです。
主な消防設備工事としては、消防設備工事、消火栓工事、非常用エレベーター設置工事があります。
主な仕事内容は、上記の「表3.電気工事施工管理の業務内容」と同様です。

消防設備には5種類あります。

消防設備 消防設備の内容
第1種消防設備
  • 屋内消火栓:1号消火栓、簡易操作性1号消火栓、広範囲型2号消火栓、2号消火栓
  • 屋外消火栓
第2種消防設備 スプリンクラー:開放型スプリンクラー、放水型スプリンクラー、温水式スプリンクラー(閉鎖型)、乾式スピリンクラー(閉鎖型)、予作動式スプリンクラー(閉鎖型)
第3種消防設備 水蒸気、水噴霧、二酸化炭素、泡消防設備、ハロゲン化合物、粉末
第4種消防設備 大型消防設備(車輪付き)
第5種消防設備 水(バケツ・水槽)、乾燥砂、小型消火器

表7.設備施工管理の種類と主な工事

 
また、消防設備の施工管理業務で活かせる資格としては、「消防設備士(甲種・乙種)」などがあります。

 

設備施工管理の仕事で求められるスキル

設備施工管理の仕事で求められるスキルは、主に以下の通りです。
・コミュニケーション能力
・スケジュール管理能力
・タスク管理能力

コミュニケーション能力

施工管理者は、
・職人などの作業者や専門工事業者
・発注者であるクライアント
・勤務先の建設会社

などと協議・連絡を行うなど、コミュニケーション能力が必要になります。
建設現場での技術上の問題点や安全管理上の課題などをくみ取りながら、社内調整を取ったうえで解決を図り、クライアントの了承を取り付けるなどの作業が日常的に発生します。
また、調整に時間を要してしまうと工事の進捗に影響し、工期にも影響を及ぼしかねませんので、スピーディーな対応も必要となります。

 

スケジュール管理能力

施工管理者は、様々な専門工事を同時並行で進行させる管理能力が必要になります。
全体の工期の中において、専門工事と専門工事のジョイント部分について、時間の空隙なく進捗させる必要があります。
とはいえ、建設現場では主に以下の原因により工程が遅延する場合が多々あります。
・作業員不足で遅延が発生し、その後の工程がずれてしまう場合
・機材・材料搬入が間に合わず、その後の工程がずれてしまう場合
・天候悪化により、コンクリート打設ができず、躯体工事の遅延により、設備工事の工程がずれる場合

対策としては、遅延した期間を取り戻す手立てを遅延する前から検討しておくことが大切と言えるでしょう。

 

タスク管理能力

勤務する会社によって異なりますが、人手が足りない場合、複数の現場を掛け持ちで担当する場合もあります。
そのため、各工事の進捗度合を比較しながら優先順位を決め、同時並行で進行させる管理能力も必要です。

 

設備施工管理に役立つ資格

設備施工管理に役立つ資格として、主に以下が挙げられます。
・電気工事施工管理技士
・管工事施工管理技士
・電気通信工事施工管理技士
・消防設備士
・建築設備士

電気工事施工管理技士

電気工事施工管理技士は、照明・変電設備・送電設備・信号・配線などの電気工事において、主任技術者・監理技術者になるための国家資格です。
電気工事を伴う工事現場において、電気工学の知識や電気法規・施工管理法を把握していることが必要になります。

 

管工事施工管理技士

管工事施工管理技士は、上下水道の配管やダクト、冷暖房設備、浄化槽などの管工事に関する工事現場において、主任技術者・監理技術者になるための国家資格です。

 

電気通信工事施工管理技士

電気通信工事施工管理技士は、インターネットや携帯電話のアンテナ基地などの電気通信工事において、主任技術者・監理技術者になるための国家資格です。2019年に新設されました。

 

消防設備士

消防設備士は、公共施設・マンション・オフィスなど、人が多数集まる大型施設において、消防・防災設備の工事・点検・整備をするための国家資格です。
消防設備士の資格が無ければ、消防・防災設備の工事・整備・点検をすることはできません。
消防・防災設備は、消火器・自動火災報知機・ガス漏れ検知器などの警報設備・スプリンクラー・屋内消火栓・救助袋・金属製避難はしごなどを指します。
消防設備士は、甲種と乙種の2種類があります。
・甲種消防設備士:工事・整備・点検が可能
・乙種消防設備士:整備・点検が可能

 

建築設備士

建築設備士は、建築士のアドバイス・指示に従い、給排水設備や電気・空調設備などの専門分野において、設計・計画を担当する国家資格です。建設現場では、設備工事の管理・指導を行います。
建築設計事務所では、建築物の設計や工事管理を請け負う場合、建築士法では契約時の交付書面に業務従事者となる建築設備士の氏名記載が義務付けされています。

 

まとめ

以上、設備施工管理の概要や仕事内容、求められるスキル、役立つ資格について解説しました。
設備施工管理は、コミュニケーション能力やスケジュール管理能力、タスク管理能力が求められる仕事と言えますが、最初から全て備わっていなくても実践しながら身につけていくことも可能です。
設備施工管理に関心のある方は、ぜひ挑戦されることをオススメします。

 

 


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